2020 Fiscal Year Research-status Report
治療と仕事の両立に向けた法理論―コミュニケーション促進規範に着目して
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19K13528
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石崎 由希子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50547817)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 病気休職・復職 / 高齢者雇用 / 障害者雇用 / 健康管理 / テレワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は前年度の計画に基づき、①労働安全衛生法領域の調査検討、②高齢者法と障害者法の比較検討、③テレワークに伴う労働法上の課題についての検討等を行った。 ①との関係では、健康診断制度や長時間労働者に対する面接指導制度・ストレスチェック制度等について調査を行った。これらの制度は、疾病予防又は増悪防止を目指すものであり、高齢化等に伴う疾病構造の変化や過労死等が社会問題化する中で発展してきたものであることを確認するとともに、これらの制度をベースとして行われる健康管理は、その結果によっては、就業上の措置や労働環境改善に繋がるものであり、それによってはじめて有効に機能すること、そのためには、医師の関与や労働者へのフィードバックが重要となることなどを明らかにした。 ②との関係では、障害者・高齢者の労働市場参加が推進される中で、心身の機能への配慮やその処遇について、どのようなアプローチがとられるべきかについての検討を行った。そうしたなかで、心身の機能の制約の程度は様々であることから、個々の労働者との対話プロセスが重要であること、また、今後の課題として、障害者・高齢者だけでなく、傷病労働者を含むより幅広い労働者に対して柔軟な働き方を認める法政策の必要性の有無について検討を行った。 ③との関係では、新型コロナウイルス感染拡大を背景に広がりをみせたテレワークについて、使用者は労働者の家庭状況やプライバシーに配慮すべきこと、家庭状況や居住環境は様々であることから、ここでも労働者との対話が重要になることを指摘した。また、テレワークがもたらす健康リスクについても、労使の対話による解決が望ましいことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染拡大下での緊急事態宣言発令に伴い研究活動(特に研究時間)が制約された一年であった。もっとも、会議・研究会のオンライン化等による効率化が図られた側面もあり、比較的多くの研究業績を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は最終年度であり、研究計画当初よりも拡大傾向にある研究対象を整理するかが課題となる。もっとも、これまでの研究計画から、コミュニケーション促進規範という視角については、その有用性が認められるように思われる。2021年度は引き続き、疾病と障害の関係やメンタルヘルスに関する課題については調査・検討を進めていく。2021年度後半には、ドイツにおける海外調査を実施したいが、この点は今後の感染状況の変化に応じて検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う移動制限により、出張等に係る旅費がうくこととなった。また、2020年度は日本法の検討に時間を割いた関係及び前年度までに収集できた資料の検討を中心に行ったことから、比較的高額な外国法文献の入手やデータベース導入が遅れている状況にある。2021年度は比較法的検討も視野に入れ、可能であれば海外調査の実施も予定することとする。
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Research Products
(6 results)