2022 Fiscal Year Research-status Report
治療と仕事の両立に向けた法理論―コミュニケーション促進規範に着目して
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19K13528
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石崎 由希子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50547817)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 健康管理 / テレワーク / 不妊治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前年度から行ってきた、①疾病予防に係る労働安全衛生法制の検討、②柔軟な働き方の1つであるテレワークに係る法的課題の検討について、学会報告・論文執筆等を通じて、検討の成果を公表するなどした他、新たに③不妊治療と仕事の両立に関する法政策の検討を開始した。 ①との関係では、化学物質管理に係る法制の検討を中心に、事業者間の情報伝達を前提に、リスクアセスメントを実施することを原則とする法制の重要性及び企業内外の人材の養成が重要であることを確認した。専門性が求められる問題について、労使が適切にコミュニケーションをとるためには、外部専門家の関与が必要であるが、同時に、企業組織内部でも、一定程度の知識を有する担当者の養成が重要であることを確認した。同検討結果は、化学物質による健康障害の問題にとどまらず、未知のリスクへの対応に際し応用できる内容と思われる。また、上記の他にも健康管理に係る法制について整理した。 ②との関係では、テレワークにより生じる労働法上の課題について論稿をまとめ、特に、要配慮労働者との関係でテレワークを実施する義務が生じうるか、パンデミック等の緊急時と平時とを分けて検討を行った。特に、緊急時については、労働者の同居の家族との関係でテレワークが求められるかについても検討を行った。 ③については、不妊治療をしていることについて職場で明らかにすることを望まない労働者も多いという特質を踏まえつつ、検討を開始しつつある状況である。2023年度以降にその成果を公表するよう努めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は海外調査こそできなかったものの、研究課題と密接な関連を有する安全衛生法制についての体系的な検討を行い、その成果を公表することができた。コミュニケーション促進規範という本研究の視点からも有益な示唆が得られている状況にある。「治療と仕事の両立」や「不妊治療と仕事の両立」に直接関わる領域の検討はこれまで遅れがちであったが、年度後半には、サバティカルに入ったこともあり、一定程度進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの成果やワーク・ライフ・バランス法制の検討も踏まえつつ、「治療と仕事の両立」や「不妊治療と仕事の両立」に係る法政策の検討を総合的に行うとともに、新たな法政策・法理の構築に向けた試論の提示を行えるよう検討を進めていくこととする。また、病気休職・復職をめぐる法理についても、新たな裁判例の蓄積がみられることなどから、その点についての検討も進めていく。
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Causes of Carryover |
研究会等のオンライン化が進んでいること、今年度は前年度までの成果の公表作業が中心となったために、執行額が低くなった。今年度は対面での研究会・学会参加が増えることや、海外文献データベース費用等の高額化がみられることから、これらに当てることを予定している。
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