2022 Fiscal Year Annual Research Report
刑事責任能力判断における理論と実践の架橋-歴史的・比較法的検討
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19K13534
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐野 文彦 法政大学, 法学部, 准教授 (20779516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 責任能力 / 刑事責任論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、裁判員裁判導入に伴い、学説・実務において刑事責任能力をめぐり活発な議論が行われている現状に鑑み、刑事責任能力判断について、我が国の判例学説史と諸外国の議論を調査することで、理論的観点から検討を行おうとするものである。諸外国の議論の調査については、当初は現地調査を予定していたところ、補助事業期間の初期段階における新型コロナウィルスの蔓延により、予定の見直しを迫られたが、現地調査以外に研究の重点を置くことで、以下の成果を得ることができた。 まず、2021年度に至るまで、我が国の判例学説史の研究と独米の議論状況の調査を行い、論文を公表するとともに、それらを基礎として、我が国の議論状況に対する一定の提言を、同じく論文において提示した。そして、最終年度である2022年度においては、その成果について、複数の学会において報告を行い、幅広い分野の研究者と議論を行うことで、当該成果について再検討を行うと共に、今後の課題についても明らかとすることができた。 また、本研究年度全体を通じて、法曹三者や精神医学者等との研究会において、実際の事例等を踏まえた議論を、複数回にわたり定期的に行うことで、実践的課題についても理解を深めることができた。2022年度には、これらの検討を踏まえたつつ、近時の裁判例分析を行い、理論と実践の架橋の一例として、当該分析を公表することができた。 さらに、比較対象国の一つであるイギリスにおける刑事責任能力判断について、2021年度までは文献調査によって、その議論の批判的検討を行ってきたが、2022年度は、新型コロナウィルスを巡る状況の変化を受けて、イギリスでの現地調査を行うことができた。イギリスの法制度やその運用、また日本のそれらとの比較について、現地の法曹や、責任能力のleading scholarの一人である研究者との意見交換を行い、多角的な検討を行うことができた。
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