2019 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者処遇における再犯防止概念に関する理論的・比較法的研究
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19K13536
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大谷 彬矩 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00801622)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精神障害者処遇 / 犯罪行為者処遇 / 再犯防止 / 保安処分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、精神障害者処遇と犯罪行為者処遇との間の境界や、精神障害者処遇の領域で「再犯防止」を強調することの意味を明らかにすることを目的としている。 一年目は、関連する法律および制度に関する研究書・立法資料を収集し、研究の基礎的な基盤を整備した。 東京都中野区の矯正図書館を訪問し、1960~70年代における保安処分導入に関する文献を収集した。特に、保安処分施設における処遇と刑務所における処遇とを比較した文献を発見することもでき、精神障害者処遇と犯罪行為者処遇との差異を明らかにする手がかりを得ることができた。 また、比較法研究の対象としているドイツの制度については、精神病院収容、禁絶施設収容、保安監置に関する文献を広く収集し、同国における保安処分の内容、沿革および現状の把握に努めた。自由刑と保安監置との間の「懸隔の要請(Abstandsgebot)」を出した、2011年の連邦憲法裁判所判決について論じた論文を取り上げ、研究会で報告を行った。これにより、「懸隔」の強調は、保安監置による被監置者に特別な設備を用意する一方、通常の自由刑について定めた行刑法においては、法および憲法上予定された再社会化の任務をおろそかにするという批判があることを明らかにした。 また、2018年連邦憲法裁判所判決は、バイエルン州およびバーデン・ヴュルテンベルク州の法律が、裁判官による許可なく精神病者の身体拘束を容認している点を違憲と判断した。龍谷大学でのドイツ人研究者による講演会の通訳業務を通じて、ドイツでは身体拘束に対して法的規制の強い要請があることを認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目は、国内外の関連する法律および制度に関する研究書・立法資料を収集し、研究の基礎的な基盤を整理することを計画していた。それに従い、文献の収集を行ったほか、実際に矯正図書館を訪れ、目的の資料を収集することができた。また、海外(ドイツ)での状況についても紹介、検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目は、一年目の文献調査によって把握した情報を基に、実態調査と理論研究を行う予定である。 新型コロナウイルスによる影響により、海外調査は困難である可能性があるため、メールや手紙により調査を行うことを検討している。国内も同様に実地調査が困難であるものの、ヨーロッパ地域に比べると状況が緊迫してはいないため、施設調査の可能性を探る。また、精神科病院や指定入院医療機関等の職員へのインタビューを実施する。 現状や海外の動向を踏まえた上で、自由刑と保安処分との異同、精神障害者処遇において「再犯防止」を強調することの意味について、理論的な研究を進める。
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Causes of Carryover |
専門図書館において収集する予定であった資料が時間の都合上、収集することができなかった。次年度に再度訪れ、収集する予定である。 翌年度分の助成金は、実態調査、インタビュー調査および文献調査のために使用する。
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