2021 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害者処遇における再犯防止概念に関する理論的・比較法的研究
Project/Area Number |
19K13536
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
大谷 彬矩 龍谷大学, その他部局等, 研究員 (00801622)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精神障害者処遇 / 犯罪行為者処遇 / 再犯防止 / 保安処分 / 自由刑 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、精神障害者と犯罪行為者処遇との間の境界や、精神障害者処遇の領域で「再犯防止」を強調することの意味を明らかにすることを目的としている。 最終年度に当たる本年度は、これまでの研究成果をまとめることを計画していた。この点については、拙著『刑務所の生活水準と行刑理論』の刊行、古稀祝賀論文集への寄稿として、結実した。 拙著では、ドイツにおいて、施設内の生活状態と社会のそれとを同一化することを求める同一化原則の展開場面を紹介する箇所で、保安処分施設における生活状態を一般の生活状態により適合させなければならないとする要請が、刑事施設よりも強いことを指摘した。このことは、再犯防止を目的とする保安処分施設が、その性質上、被収容者の人権保障の必要性も強く認識されていることを示しているであろう。 日本国内では、自由刑の在り方について、2017年3月から、法制審議会において議論が行われてきた。その後、懲役と禁錮の区別を廃止した新たな刑である「拘禁刑」を創設することが閣議決定されるに至った。一連の議論の過程で焦点となっていたのは、自由刑の内容をいかに刑法に規定するかという問題である。その規定ぶりによっては、拘禁概念の中に多種多様なものが織り込まれ、実質的に保安処分が刑罰の中に取り込まれることが危惧される。自由刑と保安処分は、執行段階に限っては処遇上の差異はほとんどないものの、保安処分は自由刑とは異なり、何らかの目的(治療、教育、社会保安など)を達成するための手段として把握される。それゆえに、その強い目的性は、自由刑以上の拘束強制をも要求し得る。今回の改正では、「改善更生を目的として」という文言を刑法に規定することで、犯罪者の社会復帰というよりも社会防衛に重点が置かれかねない。以上のことを指摘した論文を古稀記念論文集に寄稿し、2022年7月公刊予定である。
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