2019 Fiscal Year Research-status Report
電子的媒体の改ざんに対する刑事処罰の在り方-ペーパーレス社会における偽造罪の役割
Project/Area Number |
19K13537
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山科 麻衣 首都大学東京, 法学政治学研究科, 准教授 (30758256)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電磁的記録不正作出 / 偽造 / 電子媒体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電子的媒体の改ざん行為等に対する刑事的処罰のあり方を明らかにすることを目的として進めているところであるが、研究計画の通り、1年目は電子的媒体の保護に関して現在なされている対応の調査を行った。特に電子文書に関する方策についてみると、我が国では、電子的媒体に記録されたデータの不正な作出・改ざん行為については、電磁的記録不正作出罪で処罰することが予定されているが、検挙件数は例年少ない状況である。電磁的記録作出罪は、紙媒体の文書に対して与えられている保護を、文書と同様の機能を果たす電磁的記録についても与えるために立法されたものであるが、文書と電磁的記録ではその客体としての性質に大きな差異があることから、文書において「偽造」と表現される実行行為が、電磁的記録不正作出罪においては「不正に作」る行為と表現されている。このような規定方法の違いが具体的にいかなる解釈の差を生み、適用に際していかなる問題が生じるのかを、具体的裁判例を取り上げて検証することで明らかにすることができた。電磁的記録不正作出罪における不正作出にいかなる行為が含まれると解釈すべきかについては現在も論争があるが、立法経緯や処罰範囲の妥当性の観点から検討し、このような論争が起こる原因及び現状の我が国における対応の問題点を洗い出すことで、広く電子的媒体に対する改ざん行為等につきいかなる規制が望ましいかを探る手がかりを得るという意義があった。2年目にかけては、電磁的記録その他電子的媒体を用いた証拠の不正な作出や改ざん行為に対する刑事的対応について、諸外国の法制度や具体的対応との対比を踏まえて検証を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献を収集して我が国及び諸外国の立法状況を調査し、特に我が国については実際の裁判例等を調べ具体的な解釈適用の問題点を探るという1年目の計画についてはおおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に調査した内容を更に検証し、我が国の対応と英米における対応等との比較検討を進める。そして、研究成果としての論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
今年度調査を進めることができた部分については、文献はコピーではなく購入を選択したため、「その他」として使用予定であったコピー費等の使用がなかったが、次年度においてはコピー等に使用予定である。また、物品として購入予定であった記憶媒体やファイル等については不足が出てから必要に応じて購入していたため今年度は残額が出たが、収集した資料を保存し論文としてまとめるためには既に容量が不足していることから、次年度記憶媒体等を改めて複数購入するために使用予定である。また、翌年度分として請求した助成金と合わせて論文をまとめる際に使用するソフトウェアを購入する予定である。
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Research Products
(1 results)