2020 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking on coprincipal from the viewpoint of speech act theories
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19K13541
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
小島 秀夫 大東文化大学, 法学部, 教授 (10837884)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共謀共同正犯 / 言語哲学 / 言語行為 / 語用論 / 実行行為 / 故意 / 間接教唆 / 間接幇助 |
Outline of Annual Research Achievements |
共謀共同正犯の本質的特徴を導出すべく、その行為態様である「共謀」が言語哲学的にどのように捉えられるのか、立ち入った考察を加えた。言語思想の系譜をたどると、現在の学派は分析哲学・解釈学・ポスト構造主義の3つに分けられる。いずれの立場も、発話行為には、何かを言う行為にとどまらず、別の何らかの行為を遂行する性質が内在していることを認めていた。そうであるならば、共謀の認定においては、過去のコミュニケーションではどのような言語使用の慣習があったのか、関与者間における発話のコンテクスト(語用論的意味)を明らかにし、行為計画について拘束力を有するほどの相互主観的な承認の存在が立証されなければならない。 こうしてみると、共謀は、決して故意と同義ではないことがわかる。共謀の内容は、主に行為計画であるのに対し、故意の内容は、法益侵害結果の惹起を志向する具体的な行為であり、故意の内容によって正犯性の有無が決せられる。そのことは、共謀の共犯性という性質からも裏付けられよう。共謀は、本来、広義の共犯に共通する共犯性を有しており、間接教唆や間接幇助は共同教唆や共同幇助として限定的に処罰対象とされているものと解される。 コンテクストを考慮に入れて言語の意味を把握する語用論は、「実行行為」の多義性も浮き彫りにする。「実行行為」の使用規則には、①構成要件該当行為、②未遂行為、③正犯行為の3つが存在することが明らかになった。従来、共謀共同正犯については、実行共同正犯と対比する形で議論されてきたが、未遂犯論のコンテクストにおける「実行行為」と共犯論のコンテクストにおける「実行行為」の意味内容(使用規則)が異なっているにもかかわらず、その点を明らかにしないまま、「共謀行為が実行行為と評価できるか」という問題の立て方をしてきた。そのことが、共同正犯の肥大化を招く一因になったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、刑法学会をはじめ、さまざまな研究会が中止となった。そのため、研究報告の機会は限られた状況にあったが、紀要にて、共謀共同正犯の言語哲学的考察に関する論文を発表した。また、そのような考察から得られた知見を用いて、刑法判例百選に、間接幇助に関する判例評釈を掲載することができた。 渡航制限により、ミュンヘン大学にて資料を収集することはできなかったが、データベースを用いて、共同正犯などに関するドイツの判例を検索・収集することができた。そのため、全体的な評価としては「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ刑法典30条2項には、重罪を行うことを他者と約束する行為(Verabredung)が重罪の未遂に関する規定によって処罰される旨、明文化されている。そのような「申合せ」が、言語行為論に基づいて特徴づけられた「共謀」と合致するか、検討を進めたい。また、ドイツにおける共同正犯の未遂をめぐる議論にも目を向けるとともに、過失共同正犯の成否をコミュニケーションの観点から捉え直していきたいとも考えている。 なお、コロナ禍による渡航制限が続いているため、ミュンヘン大学での資料収集は依然として難しいが、データベースを積極的に活用することで補っていきたい。
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Research Products
(2 results)