2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13542
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 輝幸 法政大学, 法学部, 准教授 (50733185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 危険犯 / 放火罪 / 実行の着手 / 遺棄罪 / 未遂犯 / 文書偽造罪 / インサイダー取引 / 祖父母父母不奉養罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の延長を行った最終年度である2023年度も、引き続き個別の危険犯に関する研究を進めた。まず、遺棄罪ないし保護責任者不保護罪に関して、我が国の旧刑法および同時期のフランスにおける議論を調査した結果をまとめ、「旧刑法における遺棄罪について」千葉大学法学論集38巻1・2号256頁および「保護責任者不保護罪の沿革について」山口厚先生古稀祝賀論文集379頁を執筆した。これらの研究により、旧刑法の遺棄罪が複数の視点からその危険性を把握しており、現在の理解との相違を示すことができた。 また、2024年6月2日開催予定の日本刑法学会のワークショップ「実行の着手」において、放火罪の実行の着手に関し、話題提供者として報告する予定である。本ワークショップでは、実行の着手を犯罪ごとに各論的に研究するというものであり、本研究の問題意識と重なるものであり、2023年度においてもオーガナイザーおよび話題提供者の間で議論を進めることで、放火罪の実行の着手の特徴や他罪の実行の着手との相違点など、理解を深めることができた。 さらに、2023年12月9日の刑事判例研究会でインサイダー取引規制に関する最決令和4年2月25日刑集76巻2号139頁の評釈を報告した。当初の研究計画にはなかったが、2022年度までの文書偽造罪の研究とシステムに対する危険という点で共通性もあり、今後本格的な研究につなげたい。 以上の2023年度の研究を含めて、2019年度から行ってきた本研究により、放火罪、遺棄罪、文書偽造罪、インサイダー取引の各犯罪および未遂犯について、それぞれに固有の危険に着目した個別的な分析を深めることができた。もっとも、全体像を示すに至っていない犯罪が多いうえ、当初目的にした個別的な危険を横断的に検討することまではできなかった。本研究の成果を踏まえ、引き続き研究を続けていきたい。
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