2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13543
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 嘉亮 早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), 助教 (00837792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テロ等準備 / 共謀罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年6月30日~7月8日にドイツのマックスプランク研究所(フライブルク)へ研究出張し、ドイツ、スイス、オーストリアにおける共謀罪等の調査を行った。今回は、とくに共謀罪や参加罪の処罰根拠を調査し、集団形成に伴う特殊な危険がその根拠として挙げられていることを確認した。また、アメリカの共謀罪においても、同様の視点がその処罰根拠として考慮されている。 そのような危険性は、我が国のテロ等準備罪の処罰根拠としても導入し得るものである。しかし、そうすると、テロ等準備罪を成立させる「計画」としては、共同正犯における“共謀”よりも厳格なものが要求されることになると思われる。つまり、本罪における「計画」要件は、単なる意思連絡を超え、その後の犯罪遂行を確実なものにするだけの心理的結び付きを基礎付けるものとして解されるのである。 我が国のテロ等準備は、諸外国の共謀罪とは異なり、「準備行為」を要求している。計画が成立したにとどまらず、それが「準備行為」を通じて進展することによって、構成員らはますます当該計画を中止しにくくなる。このように、「準備行為」要件は、その後に犯罪が行われる可能性を更に高める事情であると考えられるから、本罪の処罰根拠を補強するものといえる。 以上のように解される「計画」要件および「準備行為」要件を前提にするのであれば、そこから導かれる「危険性」を理由にテロ等準備の処罰を正当化することは十分に可能であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
諸外国の共謀罪(と参加罪)の議論を参照しながら、テロ等準備の処罰を正当化できるかを検討した。その結果、集団形成に伴う特殊な危険に着目することで、正当化する余地は十分にあると結論付けた。ただし、以上の暫定的な結論は抽象論にとどまるため、如何なる場合にそうした危険性を見出せるかは、具体的には示せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では抽象的な議論にとどまっている。今後は、如何なる組織または集団において、如何なる計画または準備行為がなされた場合に、テロ等準備として処罰できるだけの危険性が創出されるのかを具体的に検討する。我が国における予備罪やドイツにおける共謀罪の裁判例を検討することで、その示唆を得る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(11,460円)では本研究に必要な外国書を購入するには足りないため、次年度分に回すことにした。
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