2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13550
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩川 隆嗣 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (20707781)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 民法 / 債権法 / 担保法 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、昨年の実施計画通り、2016年フランス民法改正後の最新の議論を踏まえて、本事業の中心的課題に関する単著『双務契約の牽連性と担保の原理 - 同時履行の抗弁・法定解除・留置権・相殺』(有斐閣、2020年)を公刊するに至った。 次に、留置権の倒産手続における処遇について、資料整理と分析を行った。その結果、いわゆる商人間留置権について、従来はドイツ法の影響の下に成立したとされており、ドイツ法的な解釈論が見られたところであるが、同権利の趣旨および起草過程に着目すると、同権利はむしろイギリス法のリーエンに類すると考えられることを明らかにできた。この点は、単独の論文か、または関連する論稿において触れる形で、来年度以降に公表したいと考えている。 最後に、研究分担者となっている他のプロジェクトとの関連で、契約連鎖における直接訴権の問題について検討を行った。同権利が認められる場合は様々な場合があり、特定の債権者が有する債権の担保として、第三債務者への直接請求権が認められる場合があるため、一種の法定担保権の一種である点に着目して、検討を始めた。しかし、契約連鎖における損害賠償請求権に関する直接訴権は、特定の債権者が有する債権の担保としての性質を有していない、ということが明らかになった。この点については、従来からの判例法理に関する議論を起点として、近時の民事責任法改正草案に至るまでの議論をフォローしている。この点については、本年度中にまとまった論稿とする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本事業の中心的課題について、最新の議論を踏まえた単著を公刊することができたため、研究に一区切りを置くことができたと言える。 また、前述した通り、留置権および直接訴権に関する分析は順調に進展しており、早い段階で論文化を行っていきたいと考えている。 もっとも、前年度の実施報告書に記載した多数当事者間相殺の問題は、これらの分析を先に行った結果、大きな進展をさせることができていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、直接訴権に関する論文は、本年度7月・8月を目途として公表媒体に草稿を提出する予定である。また、多数当事者間相殺については、同月以降から整理検討を行い、12月を目途として公表媒体に草稿を提出する予定である。留置権については、これらの都合から次年度に公表できるかはわからないが、次々年度の初頭までには公表したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
Covid-19の影響により、国内・国外出張の予定が無くなったため。 次年度は状況次第ではあるが、出張予定が立たない場合は、古書やコンメンタール類の購入費用に充てる予定。
|