2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13550
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩川 隆嗣 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (20707781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民法 / 債権法 / 担保法 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、主に次の三つのテーマについての研究を進めた。その内の二つは、論文として公表されるに至っている。 第一が、国際物品売買契約に関する国連条約(CISG)が適用される売買契約において、フランス法の直接訴権は成立するか、という問題を扱ったものである。 この問題に関して、かつてのフランス法学説にはCISGの統一的解釈の観点から賛否が存在していたが、近時の破毀院判例は、その論理構成は明確でないが、CISGとの関係でも直接訴権の制度を適用していることを明らかにできた。これは、直接訴権の法律構成を前提とすると、責任追及を受ける売主は不法行為責任を追及されるよりも有利な立場に置かれる、という観点から正当化できる。さらに、仮に直接訴権の成立を否定しても不法行為法による補充が行われるため解決は統一的でなくなる、という観点も示すことができた。 第二が、相殺の担保的機能に関して、改正民法の規律の基礎理論である相殺期待と牽連性から、現行民法の規律を位置付け直す、という点を扱ったものである。 この問題に関しては、まず、相殺の担保的機能に関する基礎理論には、ドイツ法的な相殺期待と、フランス法的な牽連性という二つの基礎理論が存在することを明らかにすることができた。その上で、自働債権の取得・原因に関する規律は相殺期待論を、同一の発生原因である契約に関する規律は牽連性を、それぞれ根拠としていると解されること、それらを踏まえて具体的な解釈論を行うべきこと、を示すことができた。 第三が、倒産手続開始決定後の倒産債権に係る債務の不履行が、倒産債権者に債務不履行解除権を成立させるか、という問題を扱ったものである。論文は来年度に公表予定であるが、債権法改正前の判例・学説を整理して捉え直し、結論として、倒産手続開始決定による契約目的の変容、という観点から解除権の成否を論じうることを示している。
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Research Products
(4 results)