2020 Fiscal Year Research-status Report
レイモン・サレイユ民法学における事実的基礎と法的構成
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19K13556
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 悠太 東北大学, 法学研究科, 准教授 (10779458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民法学 / 法人論 / 法律行為論 / 法学方法論 / サレイユ / 意思 / 法的構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の成果を踏まえ、それを、量的・質的に補充しつつ、「事実的基礎としての意思とその法的構成」と題する論文において公表した。次年度の途中まで継続して連載することが予定されているが、今年度に公表した部分においては、第一に、法人論について、『法人格について』に示されたサレイユの法人論の内容を確定したうえで、それを同時代の仏独民法学と対比するとともに、今日に至る日本民法学との対比を行った。その結果、サレイユの法人論では、権利概念からのアプローチと法的通念からのアプローチとを通じて、帰属主体の目的による行使主体の規律というメカニズムを中心に据えて法主体概念が構成されているということ、サレイユの法人論は、法主体の概念を認めたうえで社団や財団を法人として法主体とする点や法人の法人格が法的実在であるという意味において法人を法的実在とする点に特徴を有しているということ、サレイユの法人論は変容を被りつつ日本民法学の基底をなしてきたということ、日本民法学において基本問題の再考の余地があることをサレイユの法人論は示しているということ、などを示した。第二に、法律行為論については、『意思表示について』に示されたサレイユの法律行為論の内容を確定する作業のうち、その中核をなす法律行為解釈に関するものを行った。その結果、サレイユの法律行為論では、法律行為の解釈が、心理的意思の探求とは区別される一方で、なお意思を探求ないし構成する作用としても位置付けられているということなどを示した。以上が本年度の主たる研究実績であるが、そのほか、上記論文の継続部分や周辺部分についても検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サレイユの法人論・法律行為論の内容を確定したうえでそれに仏独における共時的な位置付け及び日本における通時的な位置付けを与えることや、サレイユの法学方法論の内容を概ね確定することができ、それらを踏まえて、サレイユの法人論及び法律行為論に見られる方法とサレイユの法学方法論によって提示される方法との対比を行い、両者の関係を明らかにするとともにサレイユ民法学における法学的なものの所在を明らかにする、という課題に対する解答を概ね得ることができたから。そして、それらの成果を、論文として公表し、又は公表の準備をすることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの成果を補充しつつ、引き続き論文の形で公表する予定である。あわせて、サレイユの法人論・法律行為論の仏独民法学における通時的な位置付けや、サレイユの法学方法論の位置付けについての検討のほか、総括にあたってより広い視野からの検討も行いたい。
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Causes of Carryover |
当該次年度使用額より大きい単価の書籍購入費用に充てることを図ったため。研究の進展に応じて、書籍の購入のための費用や、文献取寄せ・文献複写の費用などに充てる予定である。
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