2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13557
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
早川 咲耶 上智大学, 法学研究科, 准教授 (30825112)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会社法 / 対第三者責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
会社債権者に対する会社取締役の個人責任のあり方を、フランス会社法を主たる比較法対象として研究を行った。 会社法429条は、取締役が会社債権者を中心とする社外の第三者に対して直接損害賠償責任を負わせることを規定した条文であり、同条文の解釈・運用については、最高裁を中心とした判例実務が積み重なっている。会社債権者の保護などを理由として救済対象を広く解釈する同条文は、会社の破綻時を中心に会社法条文の中でも最も利用される条文の一つであるとされている。 フランス会社法には、日本会社法429条と同様に、会社役員が第三者に対して直接損害賠償責任を負うことを定めた規定が存在する(L225-251)。しかしながら、破毀院(フランス最高裁)の「切り離されたフォート」という判例法理によって、同条文に基づく損害賠償責任が認められる場面は相当程度に制約されている。さらに会社が破綻した場合には、判例法理による請求権併合禁止原則(le principe de non-cumul )によって、会社役員に対する対第三者責任追及は原則として禁止される。 上記の通り、会社経営に伴う第三者への賠償責任を会社経営者に認めた条文を設けていながら、日仏ではその運用のあり方に大きな差が生じているといえる。特に会社が破綻した場合、日本では会社法429条がまさに機能すべき場面であるとの評価がなされているのに対して(最高裁昭和44年大法廷判決)、フランスでは責任追及自体が原則として禁止されている。 法制度だけではなく、会社が破綻した場合の会社役員の責任の有無やその範囲について日仏の判例・学説を検討することによって、運用の違いを確認し、これらの研究を6回に渡る雑誌連載によって公表した。
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