2022 Fiscal Year Annual Research Report
契約内容に対する主観と客観の影響―契約補充理論を中心として―
Project/Area Number |
19K13559
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山代 忠邦 関西学院大学, 法学部, 准教授 (80738881)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 契約法 / 契約内容 / 契約補充 / 意思自律 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまで行ってきたフランス法に関する考察結果と比較しつつ、契約内容の補充に関するわが国の先行研究を再検討し、契約当事者の意思と客観的規範の関係の考察を進めた。 日本法において「契約の解釈」として論じられている内容を「解釈」の対象に注目すると、契約内容の補充が「契約の解釈」として論じられる際、そこで「解釈」の対象とされているのは、個々の契約当事者の意思ではなく、合意により成立した有機体としての契約であることが確認された。また、法の適用のように客観的規範を基準として契約内容を補充する場合と、契約の解釈として個別具体的な契約当事者の意思を拠り所として契約内容を補充する場合とで、考慮される要素に大差はないことも確認された。 そして、契約内容を確定する作業は法的拘束力を付与するために規範的評価を加える作業であること、契約内容の確定作業の一部をなす契約内容の補充は契約内容の確定作業の一部をなしていること、さらにフランス法の考察結果に照らして、契約内容の補充における契約当事者の意思と客観的規範の関係として以下の示唆を得ることができた。契約内容の補充が、契約当事者の意思表示に合致がない事項を補充することに鑑みると、契約当事者の意思を直接の根拠として補充される内容を導出することは困難であって、客観的規範を直接の根拠として補充される内容を導出するのが妥当である。もっとも、補充される内容は、契約当事者が契約締結に至った目的を達成させるために資すると規範的に評価されたものであることから、契約当事者の意思は、「契約の目的」という概念を介して間接的に補充される内容に影響を及ぼす。契約制度を利用し、契約を成立させるという段階における契約内容の確定とは異なり、成立した契約の内容を補充する場合、契約当事者の意思は、どのような目的をもって契約制度を利用したのかという観点から参照されるものである。
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