2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13560
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 康紀 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (50756632)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 共有 / 使用 / 管理 / フランス法 / 不分割 / 組合 / 互有 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究は、前年度に予告した通り、「「共有」論の落ち穂拾い」が中心となった。第一に、本研究の核心的な関心対象の一つとして、共有物の使用に関連する下級審裁判例を収集・分析し、研究会報告を行った。令和3年民法改正(特に252条)の評価及び解釈の方向性を考える上でも重要な作業であった。第二に、共有物分割及び遺産分割に関する日本の判例を検討し、解説を公表した。共有物をめぐる紛争の解決チャネルとしては当初「使用」「管理」「分割」の三本柱を構想していたが前二者を独立に論じることにしたところ、当初の視野で比較研究の軸を定めることがなお有用であり、またそのためには手続面・実際面についての本格的な調査が不可欠であることを再確認した。第三に、「金銭の共有」が問題となるいくつかの局面の検討を行った。前述(第二)の判例もこれに関わるのに加え、信託の局面で混和による金銭の共有の可能性がある。第四に、フランスの区分所有法の動向についての調査を行った。住宅・開発・デジタル化という政策パッケージの一環として、広範囲に及ぶ改正がなされており、そこでのバランスの取り方には、進行中の日本の区分所有法改正にも一定の示唆があるように思われる(次年度に公表)。第五に、フランスにおける共同所有論の最新の状況のフォローを進めた。フランス法に遍在する共有的諸制度は、社会学的形態においても法的解決のあり方においても多様であることを前提としつつ、「問題」の統合枠組みとしての共同所有概念が必要であるとする立場があるが、これは本研究と前提認識を共にしつつ異なる方向へ歩を進めるものであると思われ、慎重な吟味を要する。 いささかまとまりを欠いたが、それは前年度までに収束しつつあった視野を再び拡張させるという動機に基づく自覚的な方針であり、本研究は、今後の各論的検討の必要性を示唆するとともに、そこに座標軸を与えるものである。
|
Research Products
(6 results)