2020 Fiscal Year Research-status Report
決済機能を有する民法規定の体系的研究ー多数当事者の決済を中心としてー
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19K13562
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
玉垣 正一郎 名古屋大学, 法学研究科, 学術研究員 (30814074)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 決済 / 相殺 / キャッシュレス / 民法 / 無権限取引 / 弁済 / 債務の消滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目は、研究1年目終了時に想定していた研究内容を変更して、1つ目の研究内容として、キャッシュレス決済の不正使用における利用者保護の問題について、シンガポールの法制度のほか、日本の最新の動向を整理・検討した。その理由は、以下のとおりである。 本研究の目的(多数当事者間の決済において、無権限取引・瑕疵ある取引が行われた場合において、利用者の損害・損失の回復請求権を理論的に確立するため、民法の基礎的理論を提供すること)を達成するためには、理論的な研究を視野に入れつつも、諸外国を含む広い意味での立法政策(法令の制定のみならず、事業者の自主規制を含む)の観点から検討することも有用である。キャッシュレス決済における無権限取引の問題は、世界中で問題となっているからである。また、日本の金融庁が海外の金融法制の動向の1つとしてシンガポール法にも着目していること、広い意味での立法政策の問題であるがゆえ日本法の母法のみを参照する必要性は相対的に低いことから、シンガポール法を取り上げることとした。 1つ目の研究を進めた結果、①キャッシュレス決済の不正利用の問題は、当事者の過失の組み合わせに応じた損失負担ルールを抽象的に考えるだけではなく、不正取引の原因とそれに対するセキュリティ規制を併せて検討すべきこと、②消費者法の視点のみならず、競争法的な視点を含めて、総合的な立法政策の一つとして検討する必要があること、という中間的な結論に至った。この点については、2020年9月に論文を公表した。 以上と並行して、1年目の研究課題の積み残し(三者間相殺における判例理論の到達点の整理・検討)のほか、債務の消滅原因に広く関連する、近年の研究論文(ドイツ法・フランス法研究を含むもの)の収集・分析を続けた。そのため、2年目は、本研究の準備期間となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記1「研究実績の概要」のとおり、本研究の目的を達成するための準備的作業が必要となっているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目(2022年度)は、1年目(2019年度)、2年目(2020年度)の調査・分析内容の研究を進めることに加えて、当初予定していた研究の進め方も並行して実施することを予定している。
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Causes of Carryover |
2020年度は、研究拠点がカンボジアから日本に変更となったこと、新型コロナウイルスの感染拡大により、国内出張費が想定よりも少なかったことから、余剰が生じた。この余剰分については、2021年度に、書籍等の物品購入に活用させていただく予定である。
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Research Products
(1 results)