2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13563
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安永 祐司 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 准教授 (10807944)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法の実現 / 司法制度改革 / 民事裁判 / 民事執行 / ダブルトラック / 面会交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、司法制度改革において提示された「21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割」が、現在どれほど果たされているか、その後の社会の変化に対してどのような対応がされてきたか、あるいは今後どのように対応すべきかについて、幅広く検討することを目的としている。 2021年度における研究のうち重要と思われる成果は次の2点である。 第1に、司法制度改革後において公益を保護・実現する司法部門の役割が増大したために、民事差止訴訟と行政訴訟の併存(ダブルトラック)問題が生じていることは本研究において既に指摘していた。2021年度は、特に特定商取引法の場面を念頭に置いて、ダブルトラック解消の方向性について立法論的な検討を加えた。具体的には、適格消費者団体に抗告訴訟の原告適格を認め、消費者庁等による措置命令の義務付けを求める訴えを提起する可能性を認める方向に魅力を感じること、同義務付け訴訟においては、措置命令の相手方となる事業者も参加させる必要があること、このような形態の義務付け訴訟は、迅速な行政的執行を促進するものであって、現行法における民事差止制度よりも魅力があり得ることを指摘した。 第2に、面会交流の実現の実効性確保の問題である。近年の面会交流の事件数の増加に伴い、家庭裁判所に求められる役割も増大している。そのため、この問題が重要課題として認識されるようになり、現在法制審議会では面会交流の実現の実効性確保の方策について法改正に向けた検討がされている。2021年度は、ドイツ法を参考に研究を進めた。ドイツにおいては、面会交流は子の利益のためにできる限り実施すべきこと、必要であれば強制執行によって実現されるべきこと、また、迅速・強力な強制執行が控えているからこそ、任意に面会交流が実現されると考えられていることが明らかとなり、我が国の制度設計に当たっても比較対象とすることが期待されよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、本研究目的と関係する業績を複数公表することができた。なお、面会交流に関する論文は、未だ公表されていないが、既に脱稿を済ませており、2022年度中に公表される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
面会交流の強制的実現の問題については、主としてドイツ法の紹介・検討にとどまったため、これを参考にしつつ我が国における課題を検討し、この問題に関する研究として一応の区切りをつけたいと考えている。 また、2022年度は、これに加えて、法制審議会で重要課題として議論されている、養育費債務の支払確保の問題に取り組むことも予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、旅費の使用がなかったことが主たる理由である。本年度は書籍の購入を中心に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)