2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス法の検討を通じた物的担保の民事執行手続による実行の意義についての研究
Project/Area Number |
19K13564
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
瀬戸口 祐基 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (20707468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 物的担保 / 担保権実行 / 民事執行 / 倒産 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、物的担保が服する民事執行手続上の規律の意義を明らかにした上で、各種の物的担保の実行方法のあるべき姿を、倒産制度も視野に入れつつ、提示することを目的とするものであるところ、2019年度は、主として、フランス法の下での、平時における物的担保の実行方法についての検討を進めた。 この結果、まず、法定担保である先取特権については原則として一般債権者に認められるのと同様の実行方法が認められるにとどまるのに対し、約定担保についてはこれとは異なる実行方法が認められていることが明らかとなった。また、約定担保に固有の実行方法に注目するとき、一方で、担保目的財産が債権であるものとその他の財産であるものとでは実行方法が大きく異なることが、他方で、問題となる物的担保が質権や抵当権のような伝統的な形式のものであるか所有権留保や譲渡担保のように所有権に依拠する形式のものであるかによっては必ずしも実行方法に実質的な差異が見出されないことが判明した。そして、こうした整理の下でフランス法の下での平時における物的担保の実行方法を分析するならば、物的担保の実行に際しては、問題となる物的担保の類型に適合するかたちで、債務者と担保権者との間の利害調整と、担保権者と他の債権者等との間の利害調整とを、いずれも適切に行うための仕組みが必要とされており、これらの利害調整の適切性を保障するために時として裁判所の関与が求められていることが明らかとなった。 これらの検討結果は、物的担保の実行方法を検討するに際して、伝統的な形式の物的担保と所有権に依拠する形式の物的担保との間の区別を重視し、前者は裁判所の関与を必要とするものであるのに対し後者はこれを不要とするものとして扱う、日本法の下で一般に採用されている視点による場合とは、異なる分析方法の可能性を提示するものとして位置づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2019年度には、フランス法の下での、平時における物的担保の実行方法についての検討を、物的担保の個別類型ごとに行うことを予定していたが、この作業は同年度中に完了することができた。また、現在フランスで進行中の担保法改正の動向も必要に応じてフォローすることを予定していたが、この作業も、フランスにおける在外研究を2020年1月まで実施したことにより、現地研究者の協力を得つつ、進めることができている。 以上から、本研究は、おおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初計画していた内容のうち、残された部分の研究を進めていくことを予定している。具体的には次のとおりである。 まず、2020年度には、フランス法の下での、平時及び倒産時における物的担保の実行方法についての検討を行うとともに、その総括を行うことを予定している。なお、当初の計画では、この作業に関する資料収集及び専門家への聴取調査のために、2020年度後半にフランスへの出張を行うことを予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりこの出張の実施が困難となる場合には、出張を翌年度に延期しつつ、内容の一部を現地の協力者との間でのオンラインでのやりとりによって代替することを考えている。 また、2021年度には、それまでのフランス法の検討から得られた知見を踏まえて、日本法についての研究を行うとともに、その研究成果の公表作業を進めていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は本研究に必要な図書(洋書)の購入に利用する予定であったが、2020年1月までの間はフランスでの在外研究に際して現地のデータベースを利用可能であり、これにより図書の購入を代替することができたため、上記金額が残ることとなった。 これに対し、現在は既にフランスでの在外研究を終えており、在外研究時と同様の条件の下で現地のデータベースを利用することができないため、次年度使用額として残った分は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、資料収集等に使用する。
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