2021 Fiscal Year Research-status Report
フランス法の検討を通じた物的担保の民事執行手続による実行の意義についての研究
Project/Area Number |
19K13564
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
瀬戸口 祐基 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (20707468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 物的担保 / 担保権実行 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、物的担保が服する民事執行手続上の規律の意義を明らかにした上で、各種の物的担保の実行方法のあるべき姿を、倒産制度も視野に入れつつ、提示することを目的とするものであるところ、2021年度は、主として、日本法の下での、平時における物的担保の実行方法についての検討を進めた。 特に注目したのが、法改正の準備が進められている、個別の動産を目的とする譲渡担保権の実行方法である。従来は、これらの物的担保の平時における実行方法としては、民事執行手続によらない、裁判所の関与のないもののみが認められてきた。これに対し、本研究の下での検討の結果、これらの物的担保について、債務者と担保権者との間の利害調整と、担保権者と他の債権者等との間の利害調整とを、いずれも適切に行うために、民事執行手続による実行を認めることがありうることが明らかとなった。また、このような民事執行手続による実行と対比することで、民事執行手続によらない実行についても、やはり、債務者と担保権者との間の利害調整と、担保権者と他の債権者等との間の利害調整とを、いずれも適切に行うために、裁判所の関与を認めることが望ましいことも判明した。 そこで、個別の動産を目的とする譲渡担保の平時における実行方法として、民事執行手続による実行方法と民事執行手続によらない実行方法のそれぞれについて、具体的にどのような制度設計がありうるかを示す論文を公表した。その内容は、現在準備が進められている法改正のありうる方向性のひとつを提案するものとして位置づけることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度には、フランス法の下での、倒産時における物的担保の実行方法についての検討を行ったうえで、フランス法の検討結果全体についての総括を行うことを予定していた。そしてそのためには、フランスにおける担保法改正の動向を検討する必要があったところ、フランスにおける法改正作業に遅れが生じたため、2021年9月15日における改正の実現まで、検討を待つ必要があった。 そこで、フランス法の検討から得られた知見を踏まえての日本法についての研究を、倒産時における物的担保の実行方法に関する部分を除外したかたちで一応は完了させ、その成果を公表したが、本来は倒産時における物的担保の実行方法に関する検討を含めたかたちで研究成果を公表することを予定していたため、この研究成果の公表は完全なものではない。 以上から、本研究は、遅れているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、当初計画していた内容のうち、残された部分の研究を進めていくことを予定している。具体的には次のとおりである。 まず、フランス法の下での、倒産時における物的担保の実行方法についての検討を行う。特に、2021年9月15日に実現したフランスの担保法改正をめぐる動向をフォローするために、改正内容とこれに関する議論状況を検討する。なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2022年度もフランスへの出張を実施することは困難であると考えられるため、最新の情報は現地の協力者との間でのオンラインでのやりとりによって入手することを予定している。 こうして、倒産時における物的担保の実行方法についての検討が終了したら、既に完了している平時における物的担保の実行方法についての検討内容も踏まえ、改めて、フランス法についての総括を行う。 その後、こうしてフランス法の検討から得られた知見を踏まえて、日本法についての研究を行うとともに、その研究成果の公表作業を進めていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額はフランスにおける法改正に関する資料の収集に主として使用することを予定していたが、フランスにおける法改正が遅れたことに伴い、関連する資料の刊行も遅れたため、上記金額が残ることとなった。 その後、法改正が実現したことに伴い、関連する資料の刊行が続いていることから、次年度使用額として残った分は、これらの資料の収集等に使用する。
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