2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13573
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
永岩 慧子 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (90805582)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 請負契約 / 契約不適合 / 瑕疵責任 / 引取り |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民法(債権関係)改正後の規定において、債務不履行の一般規定と契約不適合責任規定の適用関係をめぐる従来の議論が、いかなる影響を受けるのかを検討し、契約不適合責任の適用基準を示そうとするものである。 初年度である2019年度は、まず、ドイツ法を中心に、瑕疵責任の適用時点をめぐる議論状況の整理・分析を行った。その成果の一部は、「ドイツ請負契約法における瑕疵責任―引取りの意義を中心に(2)」(広島法学43巻3号380頁)において公表した。また、わが国の契約不適合責任については、そこに規定される救済手段相互の関係として、修補に代わる損害賠償請求をただちに選択可能かという点に大きな関心が寄せられている。そこで、この議論の素材とするため、給付に代わる損害賠償の算定方法について従来の立場を変更したドイツのBGH判決を検討し、「請負の瑕疵責任における給付に代わる損害賠償額の算定」(名経法学44号69頁)において紹介した。 さらに、本研究を進めるうえでは、請負契約をめぐる紛争実態を把握し、それを踏まえた理論構築が必要となる。この点に関連して、請負実務において問題の中心となっている建築物の瑕疵について、ドイツにおける請負分野の近時の大規模な改正を参考に、消費者保護の観点から検討を行った。この成果については、日本消費者法学会第12回大会において報告の機会を得て、大会の予稿として、「建築物の瑕疵をめぐる責任と消費者保護-ドイツ法における議論の動向を参考に」(現代消費者法44号32頁)を公表した。学会での報告及び全体質疑を通して、実務上の問題関心を知ることができたほか、今後検討すべき理論上の課題についても多くの示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の研究実施計画に従って、おおむね予定通り研究を進めているが、成果の報告を予定していた研究会が、10月の大型台風により中止となり、他の研究者からの意見や批判を仰ぐ機会が減少した。また、2月以降の新型コロナウイルス感染症の拡大により、参加を予定していた複数の研究会やシンポジウムが中止となるといった状況が生じた。 今後は、できる限り報告の機会を得ていくほか、ドイツ法文献を中心に分析作業を引き続き進め、わが国の改正法における解釈上の問題について一定の方向性を示した論文をまとめ、公表に向けた作業を急ぐ。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に続き、同様の視点において、2020年度研究実施計画に沿って研究を進める。2019年度に行ったわが国及びドイツにおける議論の研究成果については、早急に論文にまとめ、公表する。 なお、新型コロナウイルス感染症による世界規模での影響が大きいことから、学会・研究会の中止等のほか、ドイツの文献収集や調査に遅れが生じる可能性がある。今後の情勢に応じて、入手可能な文献の整理・分析作業を先に進めるといった対応を図る。
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Causes of Carryover |
文献購入や研究会出席にかかる予算執行上、少額の誤差が生じた。2020年度に行う予定の研究計画と併せて、文献購入に使用する。
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Research Products
(4 results)