2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13574
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
小川 惠 専修大学, 法学部, 講師 (60803012)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺言執行者 / ドイツ相続法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、遺言執行者制度の在り方を検討するものである。具体的には、比較検討対象としてドイツ法を取り上げながら、制度の運用可能性や懸念事項を洗い出し、ひいてはわが国において遺言執行者制度に期待される意義や役割を検討する。 本年度は、これまでの研究成果をまとめることとし、博士論文(「遺言執行者制度の意義と展望」)の執筆を行った。ドイツにおける遺言執行者制度は、被相続人の意思の実現を目的として、被相続人が信頼する人物に広く執行態様の判断を委ねると同時に、遺言執行についての相続人の影響を極力排除するとの意図のもとに設計されており、そこに遺言執行者制度の本質的な役割ないし意義を見出すことができる。このように、遺言執行者に強力な職務権限を認め、かつ、僅かな制限のみを課すとの考え方は、ドイツ相続法の私的自治の考え方にも相応する。しかし、ドイツ法では、遺言執行者の裁量のもとで、相続人の意思が優先的に執行に反映されることがある。こうした扱いについては、遺言執行者が被相続人の信頼を受けて指名されることから、かりに遺言執行者がその信頼に反して相続人の意思を優先させたとしても、その結果は被相続人が甘受すべきと考えることもできる。相続人の利益という、被相続人の意思の実現以外の要素にも配慮がなされていることは、注目に値するだろう。こうしたドイツ法の考えは、日本法における遺言執行者制度を検討するにあたっても示唆に富む。 そのほか、わが国における相続法上の論点(負担付遺贈の問題)について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年9月頃にドイツへの渡航および現地調査する旨を計画書に記載していたが、新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、右計画は断念せざるを得ない状況となった。また、これまでの研究をまとめるにあたり、遺言執行者制度のみならず、代理や信託といった遺言執行者の代替的方法についてもより深い検討を要することが明らかとなった。計画や方針の変更を検討することとなり、やや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に取り組む予定であった遺言執行者による遺産の管理ないし処分の問題について引き続き取り組む。とくに、ドイツでは長期にわたって遺言執行者に遺産の管理をゆだねるという遺言執行の型式があり、この仕組みに着目したい。また、あわせて、代理や信託といった遺言執行者の代替的方法について遺言執行者制度とのすみ分けについて検討を深めることとしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、旅費の支出が抑えられた。引き続き、国外への渡航が困難であろうと見通されるため、研究図書ないし資料の拡充や研究環境整備のために用いることを検討している。
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Research Products
(1 results)