2020 Fiscal Year Research-status Report
Free Speech and Legal Ethnic: A case study on lawyers discourse
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19K13580
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
郭 薇 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80733089)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法情報 / 法律家 / 弁護士 / メディア / 公共性 / 言論空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度における研究の目的は、理論面の文献調査を継続しながら、弁護士による情報発信の実態を調査することにあった。Covid-19の対応が長引いたことや所属図書館で使用可能なデータベースの変更により、予定したマスメディアにおける弁護士の量的な情報発信の収集・整理が遅れているが、代わりに事例研究を展開することで弁護士による情報発信の社会的効果について一定の知見を得た。 理論検討の主要な成果は、次のものになる。法と情報に関する国内外の研究を参考に、当事者や訴訟関係者に専門的サービスとしての情報発信以外、法にかかわる情報の発信には、公共的問題への市民参加そして秩序の維持に貢献する「公共性」の特徴を検討した。具体的に、法と情報との関係をダイナミックにし、法情報を「法使用」「法記録」「公共の議論」三つの側面に分け、それぞれの領域に対応する情報の類型と問題領域について考察を進めた。とりわけ弁護士による情報発信について、SNS空間の発達とともに情報発信がもたらすマイナスな効果や、その市場的価値にまつわる収益の配分等の課題を提示した。 実態調査の事例分析において、「法実務に直接関連しない場面における法律家(弁護士)の情報発信がもたらす効果」という視点から、法学的知見が社会問題に関する公共的討議にいかに寄与できるかを検討した。2015年-2020年のゴフマン騒動(アメリカ)、2015年の五輪エンブレム騒動と2018年-2019年の著作権改正反対運動において、法律家(弁護士)による発信は、問題の共通化と公開化に寄与し、また世論と連携するという面も確認された。しかしながら、こうした情報発信は感情や主観的な体験への排除に繋がる面もあるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度においては、日本における弁護士の情報発信の基本状況を把握することを予定していた。 新聞の情報を対象とする量的調査の調査は、Covid-19の対応が長引いたことや所属図書館で使用可能なデータベースの変更により、予定以上に時間がかかった。特に、検討の対象となる記事の数が膨大であり、その分析に関する情報処理の専門家の助言や調査の補助人員の確保が不可欠であるが、その調整が難航した。 一方、比較事例研究によって、弁護士による情報発信のきっかけやその特徴に関する検討にとどまらず、マスメディアやネット言説との相互作用も確認できた。その知見を用いて、より要点に絞って弁護士の情報使用に関する今後の調査を進める。また、理論的検討では、日本における法情報が使われている多様な文脈の所在を明らかにした。 以上より、本研究の進展はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の前半では、引き続き2010年以後の日本の主要な新聞における弁護士言説の引用傾向を調査し、加えて弁護士情報に特化したネットメディアである弁護士ドットコムの記事に関する事例研究を行う。そこではテキストの内容分析に加えて、拡散経路、弁護士の属性(登録年数、地域、分野など)との関係を解明しながら、弁護士による情報発信の役割とそれへのニーズを検討する。より効率的に研究を進めるため、記事データをランダムサンプリングし、テキストマイニングの手法による分析を導入する。 2021年度の後半では、日本全国各地弁護士会の広報委員会に対するアンケート・インタビュー調査を実施し、弁護士会または弁護士個人の情報発信活動の状況や守秘義務や弁護士の品格など弁護士倫理の視点から見る情報発信の注意点等について当事者の認識を把握する。
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Causes of Carryover |
①Covid-19の対応が長引いたことや所属図書館で使用可能なデータベースの変更により、新聞の記事を対象とする量的調査の調整に予定以上時間がかかった。特に、その分析に関する情報処理の専門家の助言や調査の補助人員の確保が難航し、オンラインでの調査や相談から深い内容まで推進することが困難であった。そのため、当初予定していた謝金や人件費等の調査費用が残った。② 2020年度に予定していたいくつの出張がCovid 19感染拡大など予期しない事情の影響により中止になったため、当初予定していた出張旅費に残額が生じた。 2021年度において、①の調査は実施する見込みである、②出張が可能の場合、予定通り出張旅費として使用する。Covid-19の影響で出張が困難の場合、オンライン会議の設備やオンライン調査の関連書籍の調達に充てる。
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Research Products
(4 results)