2019 Fiscal Year Research-status Report
「汚職との闘い」をめぐる政治:現代ロシアにおける腐敗防止政策の展開
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19K13585
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
油本 真理 法政大学, 法学部, 准教授 (10757181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 汚職 / 腐敗 / 国際規範 / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる2019年度は、国際規範との関係、とりわけ国際腐敗防止条約の批准に伴うロシア国内の腐敗防止政策の変化に関する研究を進めた。このテーマに関連して今年度中にまとまった成果としては、「腐敗防止の国際規範とロシア―公職者の資産公開制度を事例として―」(『国際政治』第199号「国際政治研究の先端17」、2020年3月刊行)を挙げることができる。ロシアにおける資産公開制度は国連腐敗防止条約の批准を受けて導入された制度の一つであるが、同制度が施行されてからしばらく経った後に国内政治プロセスの中で制度が一定程度厳格化されるという興味深い展開をたどった。同論文は、現職エリートの行動を制約しかねない制度がいかなる力学の下で厳格化されたのかについて、国際規範の受容を推進した政権、国際NGO・専門家、国内の野党勢力の三つ巴の関係性に注目して検討を行ったものである。また、今年度は上記の論文執筆に加え、反体制派活動家として汚職摘発運動を活発に展開してきたアレクセイ・ナヴァリヌィの活動とその政治的なインパクトについての情報収集・検討にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)官主導による国際規範の受容とその影響、(2)野党陣営による汚職問題の政治争点化と政策の変化、(3)政策の導入に際しての現職エリートの反応とその政策への影響、の3つの柱を設定し、それぞれについての実態解明、およびそれらの相互関係についての考察を行うことを目指すものである。2019年度は主に(1)の国際規範の受容の影響に関する検討を進めた。これは(2)および(3)にも深く関わる論点であり、次年度以降の研究の手がかりとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、野党陣営による汚職問題の政治争点化と現職エリートの反応が腐敗防止政策に与える影響について検討することにしたい。そのためにはまず、今年度取り上げた資産公開制度以外の様々な腐敗防止政策について、それぞれの共通点および相違点を把握する必要がある。また、野党陣営による汚職問題の政治争点化に関しては、議会内の野党と議席を持たない反体制派との相互関係も重要な意味を持つと考えられることから、この点を主軸として考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は国際規範の受容とその帰結に関する研究成果の取りまとめに予想以上に時間を要したため、調査および学会報告を見送ることになった。当初予定していた研究計画は次年度以降に取り組むことにしたい。
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Research Products
(1 results)