2021 Fiscal Year Research-status Report
「汚職との闘い」をめぐる政治:現代ロシアにおける腐敗防止政策の展開
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19K13585
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
油本 真理 法政大学, 法学部, 教授 (10757181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロシア / 汚職 / 汚職対策 / 権威主義体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(1)野党勢力による汚職批判が政権に与える影響、および(2)政権による各種の反汚職政策、に関する研究を進めた。まず、(1)に関しては、2011年末から2013年頃にかけて反体制派が展開した汚職批判に対する政権の反応について検討した。その際に、本研究では、汚職問題に際してユニークな役割を果たした「全ロシア人民戦線」(2011年に結成されたプーチンを支持する運動)の活動に焦点を当てた。この成果が2022年3月に刊行された「プーチン期のロシアにおける官製反エリート主義とその限界―『全ロシア人民戦線』の活動を中心に―」(『立教法学』106号)である。同論文からは、「全ロシア人民戦線」が、2012年以降の数年にわたり、政権が反体制派からの汚職批判をかわすための道具として用いられたことが明らかになった。(2)については、2012年以降のプーチン政権下の反汚職政策の見取り図とすべく、「プーチン期のロシアにおける汚職と反汚職」と題するペーパーを執筆した。プーチンが大統領に返り咲いて以降のロシアの汚職対策は、一見するとエリートに対する締め付けを強化する厳しい内容でありながら、実際には抜け穴が多く実効性に乏しいという二面性に特徴づけられている。同ペーパーでは、野党勢力からの批判に対処することを主目的として行われる反汚職の力学(「消極的反汚職」)に注目し、資産公開制度をはじめとした各種の法制度、公職者のパージ等を事例とした検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)官主導による国際規範の受容とその影響、(2)野党陣営による汚職問題の政治争点化と政策の変化、(3)政策の導入に際しての現職エリートの反応とその政策への影響、の3つの柱を設定し、それぞれについての実態解明、およびその相互関係についての考察を行うことを目指すものである。2021年度は主に(2)および(3)の課題に取り組んだ。これから細部を詰めていく必要はあるが、今年度の研究により、2012年以降のプーチン政権下での反汚職対策についてはある程度全体像をつかむことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、政策の導入に際しての現職エリートの反応とその政策への影響についての研究を進める予定である。今年度までの研究により、プーチン政権下において導入された汚職防止政策の内容は一定程度明らかになったが、こうして導入された制度が実際にどのように運用されたのかについての検討は不十分である。今後は各制度の実態についての調査を進めたうえで、反汚職の力学に関する研究をより精緻化し、ブラッシュアップすることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初の計画では現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス流行の影響で見送らざるを得なかった。当面は文献や各種ウェブサイトから得られる情報に基づいて研究を進め、必要な現地調査は次年度以降に設定することにしたい。
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