2019 Fiscal Year Research-status Report
日本における家族と税制に着目した政権党の応答性に関する分析
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19K13588
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
豊福 実紀 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (30631725)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本政治 / 政党 / 女性 / 家族 / 税 / 年金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、個別的な利益分配を特徴とする自民党の長期単独政権のもとでさえ、組織化されていないサラリーマン層とくに専業主婦世帯を対象とする所得税減税が行われていたことを手掛かりに、女性と家族に着目しながら、政権党と有権者の関係を問うものである。 初年度にあたる2019年度は、日本についての調査を開始した。具体的には、日本でサラリーマン減税の一環として推進され、女性の就労の壁をもたらしているとされる所得税の配偶者控除制度と、同じく女性の就労の壁をもたらしているとされる年金の第3号被保険者制度を取り上げ、これらの制度に対する自民党をはじめとする各党の長期的な姿勢の変化を、国会会議録や各党の機関誌等から探った。また家族の変化や世論の変化との関連を考察した。 その結果、右派政党よりも左派政党の方が女性の就労と親和的な政策を志向するという一般的な傾向が日本についても確認できたが、同時に、次のような点も明らかになった。専業主婦世帯が増加した高度成長期には、左派政党内から主婦を評価する見解が示される一方で自民党はあまり主婦に関心を示さず、もっぱらサラリーマン減税として配偶者控除制度が拡充された。女性の就労が拡大した1980年代には、左派政党内から女性の社会進出に力点を置いた主張が示されたものの、いずれの政党も女性のパート労働に関心を寄せる中で、配偶者控除制度が拡充され第3号被保険者制度が導入され、パート労働が有利でフルタイム労働が不利となるような女性の就労の壁が顕在化することとなった。育児期間を含めて就労を継続する働き方への世論の支持が急速に上昇した2000年代以降も、自民党は女性のパート労働に関心を寄せており、配偶者控除制度は改廃が論じられながらも存続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度中の研究は、おおむね当初の研究計画に沿って進展した。研究成果は、複数の論文に取りまとめ投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は日本についての研究を進展させるとともに、比較研究のためヨーロッパなどでの調査を実施する計画である。2020年度は国内外の学会で発表を行うことが決まっており、それらを比較研究を進展させる機会として役立てたい。
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Causes of Carryover |
2019年度は当初から日本についての研究を中心に進める計画だったが、政府資料を活用することで想定よりも調査費用を抑えられたこと、かつ日本についての調査の進捗を踏まえてその分析と論文執筆に注力したことから、次年度使用額が生じた。これを用いて、当初から2020年度に計画している海外調査の対象を広げて充実化を図り、比較研究を進展させたい。
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