2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13595
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
白谷 望 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (40780119)
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Project Period (FY) |
2020-02-01 – 2023-03-31
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Keywords | モロッコ / 君主制 / 権威主義体制 / 選挙 / 議会 / 政党 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、権威主義的な君主制の選挙と議会の機能に注目して、「如何なるメカニズムでモロッコの君主制が安定性を維持しているのか」という問いを考察することである。 モロッコは、アラブ諸国で最も早く複数政党制を導入した国のひとつであり、選挙毎に約20の政党が議席を獲得する分極的多党制である。これまでの研究で、モロッコ王制が安定を維持する方策として、統治者による諸政治勢力の分断統治と「名目的な」政権交代(状況に応じた与党と野党の組み替え)に注目してきた。これらが行われるには、政治領域が細かく分断され、多くの政治勢力がそこで活動していることが前提となる。しかし、分断された政治領域がどのように形成されたのかという点に関しては、課題として残されている。本研究では、モロッコ政治の特徴である分断された政治領域を、伝統的な社会の多元性との歴史的 連続性から検証する。 2021年度は主に、研究計画の二つ目の課題として掲げた「社会的多元性の政党政治への転換に関する分析(国家建設期)」、そして三つ目の課題である「分断的政治領域の再生産に関する分析(90年代~)」に取り組んだ。 これらの課題を通じて、以下の2点が明らかとなった。①モロッコにおいては、独立後から90年代までは王党派諸政党が第一党となることが多かったが、90年代以降はこれらの政党が連立政権に参加することで諸政党間のバランサーとしての役割を果たし、且つ同国の政治運営に影響を及ぼしていること。②王党派政党は、時代状況に応じて国王によって創出されるが、他の政党と同様に、分離融合を繰り返しており、その過程では国王の介入は見られないこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題②「社会的多元性の政党政治への転換に関する分析(国家建設期)」と課題③「分断的政治領域の再生産に関する分析(90年代~)」の成果をまとめ、2021年5月に日本中東学会で口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に日本中東学会で発表した課題②と課題③の成果を、論文としてまとめる。同時に、一つ目の課題である「社会の潜在的多元性の顕在化に関する分析(保護領期)」についても、追加で必要な資料およびデータを収集し、その成果を論文にする作業に注力する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、9月と3月に予定していた海外調査が中止となり、また海外での資料収集が出来なかったため。 2022年度は、9月と3月に海外調査(モロッコ及びフランス)を計画しており、また調査地での資料購入費・複写費と謝金の支出を予定している。
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Research Products
(2 results)