2019 Fiscal Year Research-status Report
17世紀イングランド、ドイツにおけるネーション概念
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19K13601
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小島 望 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (10838171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 国民国家 / ネイション / テキストマイニング / ナショナリズム起源論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究実績は、主にテキストマイニングの方法に関連するものであった。本研究計画は、概念史あるいは政治思想史、政治史、歴史社会学的ナショナリズム理論を、テキストマイニング(定量的語彙分析)によって統合することを目指すものである。特に重要であるのは、本研究計画において申請者が初めて採用する、テキストマイニングと呼ばれる研究手法であるである。これは本研究計画の要ともいうべきものである。それゆえ二年間に渡る研究期間の初年度である2019年度は、テキストマイニングの方法論の涵養に焦点を当てた。具体的には、テキストマイニングの方法に関係する書籍を入手・読解し、本研究計画における方法論の確立に努めた。同時に、本研究に関連する歴史学、概念史あるいは政治思想史、ナショナリズム関連文献の蒐集に努めてきた。具体的には、申請者がこれまでに研究を行ってきた、イングランド内戦期における議会派の刊行物におけるイングランドのネイション、他のネイション、ピープル、臣民[subjects]、王国、国家[state]、コモンウェルスの各々の語彙の出現頻度と出現の相関性を検証する研究を行った。この研究は学会で発表し、非常に有益なコメントを賜ることができた。上記報告を通じて、本研究における具体的課題の明確化や、解決方法の発見を果たすことができた。このように、初年度の研究実績は、主にテキストマイニングの方法論の涵養および追究と関連するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、大きく分けて二つの工程・段階に区分することができる。第一に、テキストマイニングに関連する方法論の確立と、第二に実際の史料分析である。本研究計画における初年度である2019年度は、主にテキストマイニングの方法論の習得と、本研究におけるその応用に充てた。具体的には、【研究実績の概要】に記した学会報告(ソーシャル・コンピュテーション学会第11回研究例会)が、その具体的成果である。これは、これまでのテキストマイニング関連の文献蒐集および閲覧と並行して行ったものであるが、この際に得られた知見は、本研究計画を遂行する上で重要な示唆となった。これらを経て、初年度たる2019年度における研究活動は、本研究計画全体の準備段階の完了を示すものであるといえる。 本研究計画におけるテキストマイニングの方法確立以外に関して、本研究計画の三つの柱というべき、歴史学、概念史あるいは政治思想史、ナショナリズム研究の進捗状況について述べる。いずれの分野に関しても、本研究計画において必要とされる文献の蒐集に努め、それぞれ読解を進めている段階にある。また、2020年度に重点的に分析を進める史料に関しても、イングランドのものに関してはすでに蒐集を完了しており、今後、テキストマイニングの実施に必要とされるコーパス(語彙統計)の作成を行い得る段階にある。 上記の状況を鑑み、現時点での本研究計画の遂行状況は、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
既述のように、本研究の準備段階は2019年度に概ね完了したと判断できる。2020年度の研究においては、具体的な史料分析にフェーズを移行する。具体的には、以下の諸工程を踏む。 第一に、史料の選定である。上で述べたように、すでに申請者は分析期間のイングランドの史料選定を概ね終了している。他方で、本研究計画におけるもう一つの対象であるドイツのそれに関しては、未だ終了していない。それゆえ、第一にドイツにおける史料の選定と蒐集を優先する必要がある。 第二に、コーパスの作成を進める。これは、テキストマイニング研究においては必須となる語彙統計である。本研究の分析期間である17世紀における史料の多くはpdf形式で閲覧できる。しかしながら、テキストマイニングにおいてはテキストファイル形式のデータが必要とされており、それゆえコーパスに抽出する部分をテキストファイル化することが必要である。これは多くの時間を割く必要があるため、次年度の研究エフォートのほとんどを費やす過程となる。 第三に、分析である。前述の第二工程で得られたコーパスをテキストマイニングにかけ、本研究計画全体の課題に照らして、いかなる知見が得られるのかを明らかにする必要がある。テキストマイニングは単に語彙と語彙の関係性を数値化する作業にはとどまらず、その結果からいかなる命題を打ち出し得るのかという点を解明する必要がある。それゆえ、テキストマイニングという定量分析の結果と、本研究計画と関連する定性的研究において提示された既存のテーゼとを突き合わせる必要性がある。これら三工程を完了しる後に、これまでの研究成果を論文という形で発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度の研究においては、歴史学、概念史あるいは政治思想史、ナショナリズム研究と関連する文献の蒐集と読解に努めた。本年度は結果として研究計画全体の準備段階を終えることとなったが、当初予定していた書籍の購入が遅れたため、差額が生ずることとなった。2020年度の研究においても、必要が生じた文献の蒐集や、論文投稿に必要となる学会の会費や、学会の出張費等に充当することを予定している。
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Research Products
(1 results)