2022 Fiscal Year Research-status Report
計量テキスト分析を用いた中国共産党の政治宣伝に対する研究
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19K13604
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
工藤 文 早稲田大学, 政治経済学術院, 日本学術振興会特別研究員 (80779067)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国 / 宣伝 / 人民日報 / 計量テキスト分析 / 半教師あり学習 / 正統性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は2021年度に行った学会報告の成果に基づき、査読誌に論文を掲載することができた。「『人民日報』における報道内容の変容-1950年から2020年を対象とした計量テキスト分析-」と題して、『メディア研究』101号に掲載された(中山敬介氏との共著)。 1950年から2020年の70年にわたる新聞記事を対象に、『人民日報』における報道内容の変化を明らかにすることを目的に計量テキスト分析を行った。計量テキスト分析には、中国共産党に関する記事24896件を対象に、半教師あり学習(Semi-supervised learning)の手法を用いて分析を行った。はじめに、RパッケージのNewsmapによって国内の記事に分類した。その上で、Latent Semantic Scaling (LSS)を用いて種語を元に記事を分類した。 分析の結果、党に関する新聞記事において教条的宣伝を中心とする記事は依然として存在するものの、2000年以降に国家発展を中心とする記事の比率が相対的に高まったことを明らかにした。さらに、腐敗・汚職に関する報道では、自己批判から世論監督を中心とする記事の比率が2005年以降に高まった。ここから、『人民日報』を通じた正統性確保の手段が、思想・イデオロギーから党の成果を強調することに変容したことを明らかにした。 研究の意義は次の2点である。第1に、中国の権威主義体制とメディアの関係を、権威主義体制におけるメディア利用から捉える視座を提供した点である。党は経済成長や社会の問題を解決する成果を強調することで、人々の支持を集め正統性を確保しようとしていると推測できる。第2に、中国メディア研究の可能性を広げることができるという意義である。今後は、SNS、党大会や人民代表大会テキストなど、豊富な情報を含む政治テキストを対象に分析を発展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年の学会報告の内容を修正、および分析手法を精緻化させた上で、査読誌に論文を掲載することができた。分析手法の精緻化について、具体的には代表的な記事に対して信頼性検定を行うなど、分析の妥当性を高めるための工夫を行った。導き出した結果も、当初の研究計画と合致した内容となっており、研究が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで新聞を対象に行っていた分析を、ソーシャル・メディア(中国版twitterと言われるWeibo)を対象にして、分析を発展させる予定である。中国共産党はソーシャル・メディアで宣伝を強化していると言われる。そこで、これまでの研究成果に基づき、ソーシャル・メディアにおける宣伝政策をまとめるとともに、ソーシャル・メディアテキストの分析を進める。
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Causes of Carryover |
学会がオンライン開催だったため、旅費の使用額がほとんど生じなかった。2023年度は、日本比較政治学会で学会報告を予定しているため、旅費が生じる予定である。また、2021年度の学会報告に基づいて論文を執筆したため、最小限の出費となった。
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