2021 Fiscal Year Research-status Report
スペインとイタリアの比較研究に見る連邦制的分権化改革の帰結
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19K13611
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
永田 智成 南山大学, 外国語学部, 准教授 (20734932)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分権化 / 南欧 / 連邦制化 / 民営化 / 住民投票 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は2つのことにポイントを絞って研究を進めた。ひとつは、独立を意図した住民投票の実施において、中央政府がどのように対応するのかをスペインとイタリアの事例を用いて検証したものである。スペインにおいては、中央政府は自治州による住民投票の実施そのものを疑問視し、実施を阻止し続けるという介入を行なった。その結果、自治州側は住民投票の実施を強行し、投票を阻止しようとした警官隊と多数の市民が衝突することとなり、挙句、中央政府によって一時的に自治権が停止されるという事態を招いた。 他方、イタリアでは、2度住民投票が企図され、1度は中央政府によって許可された。独立を求める住民投票は許可されなかったが、自治権の拡大を謳う住民投票においては、中央政府の許可が出たのである。 この2つの事例の比較から、住民投票の意味合いの違いを見出すことが出来る。すなわち、スペインにおいては住民投票は、最終目標であるのに対し、イタリアでは数ある政策のプロセスの一環に過ぎないのである。したがって、自治権ないし独立を求める住民投票といえども、場合や状況によってその示す意味合いが大きく異なるということがわかった。この研究成果は、南山大学紀要『アカデミア』社会科学編で発表した。 もうひとつは、ユーロ初期メンバーになる過程で、求められる様々な条件を満たすために、民営化や分権化がなされたことを明らかにしようと取り組んだ。こうした国際情勢の中での取り組みについては、保守政権や革新政権といった違いは見られないということが明らかになったが、残念ながら、民営化や分権化の整理が不十分であり、論文掲載には至らなかった。引き続き掲載に向けて準備を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗が遅れている最大の原因は、新型コロナウイルス感染症の大流行により海外出張が叶わず、当初予定していた議会議事録や各種行政文書の閲覧が叶わないためである。今年度は海外出張が可能となる可能性がありそうなので、そこに期待する。 他方、海外出張が叶わないからといって「研究実績の概要」で述べたように、研究が全くできなかったわけではない。新型コロナウイルス感染症の拡大当初は海外からの書籍の輸入もままならず、国内図書館の閲覧も困難であったことから、研究ペースは停滞したが、秋以降、可能な範囲で研究を続けることが出来た。その結果、「研究実績の概要」で述べたように、いくつかの重要な論点や課題を見つけることができた。 まとめると、1次資料に関する研究は停滞せざるを得なかったが、2次資料による研究では、スペインとイタリアの分権化改革のプロセスの違いを鮮明にすることができており、それなりの成果が出ていると理解している。ゆえに自己評価としては、「(3)やや遅れている」が妥当であると考えられる。 今年度は「研究実績の概要」で述べた残された課題を完了させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、海外出張をし、必要な資料収集を行なう。海外出張が叶わない場合でも、国内の資料館等の訪問・閲覧を行なう予定であり、論文執筆に必要な資料収集に努める。 今年度、成し遂げなければならない課題は、統一通貨ユーロの初期メンバーになる過程において、スペインとイタリア両国がどのように分権化改革を達成したかについて明らかにすることである。二次文献については集められているが、議事録等の一次文献については不足しているので、その収集に努める必要がある。 また昨年度掲載が叶わなかった論文の投稿を可能にするためにも、資料を丁寧に読み込んで、概念の整理をきちんとする必要がある。そのためには、ヨーロッパ統合、民営化、経営合理化、分権化という多くの場合、複数の問題意識に基づいて展開されている研究をつなぎ合わせる必要があり、先行研究の整理をしながら、本課題の問いに明示的な回答ができるように努める。
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Causes of Carryover |
最大の原因は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、当初計画していた海外での資料収集が思ったように出来ていないことにより、出張旅費が計画通り執行できていないことである。今年度、チャンスがあれば、海外出張を敢行し、資料の収集に努めたい。それが叶わない場合でも、国内の他大学の資料を閲覧・収集し、今年度の研究計画で挙げた課題の遂行に取り組みたい。
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Research Products
(2 results)