2019 Fiscal Year Research-status Report
A comparative analysis of Chinese and Russian use of economic interdependence as political leverage
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19K13619
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経済的相互依存 / 政治レバレッジ / 非民主主義国家 / 中国 / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
経済的相互依存と政治レバレッジと政治体制の関係を、理論的かつ実証的に明らかにするために、相互依存状況の非対称性を政治レバレッジとして用いて関係諸国の行動に影響を与えようとする「モダリティ(様態)」を記述することが主な目的である。具体的に、中国とロシアを取り上げて、両国にとって望ましい状況を進展させたり、求める政治的目的を達成したりするツールとして活用する経済的相互依存のプロセスを、貿易統計や他の経済指標を通して分析している。本研究は、1.経済的相互依存状況の特定、2.依存バランスのメカニズムと政治レバレッジの関連性の解明、3.経済関係 における非対称性の増大の意図性の検証、の三部で構成されており、現代の非民主主義国家の行動パターンと経済活動の一般法則を解明することを目指している。2019年度は、「経済的相互依存状況の特定」、つまり、IMF、世銀、UNCTAD等の貿易データベースや各国の国内統計をもとに、二国間の依存バランス (40ペア)に着目し、資本の相互依存や金融の相互依存も分析対象にして、貿易以外の経済活動も考慮して、経済的相互依存性を検証することを試みた。3つの分析項目(a/貿易構造、b/金融相互依存、c/資本相互依存)を検証することで、Keohane とNyeによる「脆弱性」の概念(経済関係の中断に含まれる経済コスト)に基づく「依存バランス」を明らかするように努めた。まだ、分析しきれていないところはあるが、長崎とフランスで開催された国際会議で口頭発表により研究成果を発表した。これらの発表の一部は後に論文の形として出版される予定である。ただ、今年に入ってからの新型コロナウィルスの発生により、予算を使いきることができなかったので、残額を次年度に繰越しした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス発生のため、開催が中止された集会が一部あったが、分析自体に大きな影響はなかったと思われる。2019年度の研究成果の一部はフランスで開催された国際学術集会で発表した。後に論文の形にして発表される予定である。IMF、世銀、UNCTAD等の貿易データベースや各国の国内統計をもとに、貿易構造、金融相互依存、資本相互依存の3つの検証を開始した。貿易構造やODA・FDIの資本フローは公式データが比較的入手しやすく、コーパスの作成には大きな困難を伴っていない。このため、Gelpi-Griecoの公式を計算するのは容易であった。一国の貿易品目構成の中から戦略的品目を選別するために、各国の実情を把握するように努めた。特定貿易品目の市場構造の把握において、代替市場や代替供給国を見出す必要があるが、製品市場自体が流動的であるため、メディア情報に頼らざるを得ないところが問題かもしれない。総じて、メディアは恣意的に情報が切り取られて発信されるので、国際機関から発出される情報を待つ必要がある。貿易以外の経済活動も考慮するために、資本の相互依存や金融の相互依存を見てみたが、特定できない資本があるなど、当初分析しにくい項目であるように見えたが、少しずつ見極めができるようになってきている。また、40ペアの二国間の依存バランスに関するコーパスを作成する予定だったが、いまのところ一部に留まっているが、データが部分的にでも経済的相互依存状況を特定する分析手法を試せたのは大きな収穫である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の目標は「依存バランスと政治レバレッジの関連性の解明」と位置付けている。政治レバレッジは、一般に「ポジティブ」(LM1)、「ネガティブ」(LM2)、「規範的」(LM3)に分類されるが、具体的なレバレッジの使用を見るために、4つの分野(経済、安全保障、領土、人権と自由)に関する二国間の競合または対立状況(交渉・緊張・紛争・危機)の事例を収集したコーパスを作成し、依存バランスと政治レバレッジの関連性を検証することを目指す。これらの事例研究を通して、中国とロシアが、1いつ(事例)、どのように(関連するプロセスとメカニズム)経済的相互依存を政治レバレッジに変換したのか、2どの条件で、経済的相互依存が対象国との対立を緩和しているか、あるいは緊張させているのかというプロセスの理解を試みる。また、どの条件で経済的相互依存が他国との対立を緩和するのか、逆に緊張を悪化させるのかという国際安全保障上の含意も検証し、ロシアと中国の行動パターンと経済活動の動きとの関連性を明らかにすることを目指す。具体的に、まずは2019年度に収集しきれなかったデータを補足し、分析するコーパスの拡充を行う。分析がある程度の完成度に達すれば、これらの研究成果を、参加が決まっている2つの国際学会で発表する予定である。ただ、新型コロナウィルス感染が収束する状況になく、予定している国際学会延期または中止で参加を取りやめざるを得ないおそれがあり、予定通りに研究が進行しないことを危惧している。状況に応じて、予算を統計データや分析ツールなどの購入に当てるなど、適切に対応するつもりである。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス発生のため、年度末に予定していた中国への出張を取りやめるざるを得なくなったことが理由である。取りやめになった出張で生じた未使用額は2020年度に出席が決まった中国での国際会議のための出張で使用する予定である。
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Research Products
(1 results)