2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13626
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
大村 啓喬 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (50609344)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 旗の下の集結効果 / 世論 / 国際危機 / 観衆費用 / 男女差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際危機や政府が対外的な軍事行動を起こした場合に、政府に対する有権者の支持率が短期的に上昇する「旗の下の集結効果(Rally ‘Round the Flag Effect)」という現象を日本のミクロ・データを用いて実証分析することを目的としている。 集結効果に関する研究及び隣接の研究は、安全保障政策の実施に関連するアクターである政府、野党、メディア、有権者を対象とした国際関係論とともに、有権者の投票行動や世論を対象とした政治行動論の分野で研究成果が蓄積されている。そこで、2019年度は、集結効果に関する先行研究の文献を幅広く収集し、それらの検討と整理を行った。特に、男女間で安全保障環境の変化に対する反応や安全保障政策に対する政策選好に性差が生じる点と、有権者の安全保障に関する情報取得能力及び情報理解能力の違い(情報格差)によって集結効果を生み出すとされるイベントに対する反応が違う点を考慮したうえで、「集結効果」概念の精緻化と集結効果と他の理論との融合及び区別を目指した。 さらに、2019年度は、インターネットを用いたサーベイ調査及びその調査データの分析が実施できなかったため、研究代表者が過去に実施したサーベイ調査のデータと公開されている他の研究のデータを用いて、実証分析を実施した。それにより、集結効果の男女差及び集結効果と情報格差の関係を明らかにするために必要な質問票と調査デザインの構成を改良することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2019年度は集結効果に関する先行研究の文献を幅広く収集し、それらの検討と整理に加えて、年度後半にインターネットを用いたサーベイ調査を実施する予定であった。先行研究の収集及び、問題点の検討については、当初の予定通り進めることができた。しかし、インターネットを用いたサーベイ調査については、調査に必要な研究計画、調査デザイン・質問票を作成したが、インターネットの調査会社から提示された見積もりが、当初想定してたものよりも大幅に高額であった。予算内で調査を実施するために質問数の削減や調査規模の縮小も検討したが、その場合に実証分析の結果の信頼性が低下することなどを理由として、2019年度は調査実施を断念した。また、本研究では連続したサーベイ調査を計画していたが、1回分の調査費用が当初想定したよりも大幅に高額であったため、2020年度・2021年度の調査についても調査内容及び調査規模などの調査計画の作り直しを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としは、まず2019年度に進めた安全保障環境の変化に対する反応及び安全保障政策に対するに政策選好の男女差に関する実証分析をペーパー化し、学術誌での公刊を目指して投稿作業を行う。また、有権者の情報取得能力及び情報理解能力と集結効果の関係については、北朝鮮による核・ミサイル開発実験を日本にとっての最重要の集結効果を生み出すイベントとして調査を進め、実証分析及びペーパー化の作業を行う。そして、インターネットを用いた集結効果に関する第1回目の調査は、国内の政治状況(衆議院の解散等)にもよるが、2020年度の秋口にパイロット調査を実施し、同年度の冬に本調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は、実施予定であった第1回目のインターネットを用いたサーベイ調査が実施できなかったため、研究費に余剰が生じた。 2019年度に生じた研究費の残額及び2020年度の助成金は、2020年度に実施予定のサーベイ調査のパイロット調査及び本調査の費用として予算執行する予定である。また、サーベイ調査実施後に生じた残額は、論文の英文校正費に利用する予定である。
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