2019 Fiscal Year Research-status Report
国際連盟における国際法の法典化事業と国際法学者ハドソン
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19K13635
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 力也 日本大学, 国際関係学部, 助教 (80779843)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際法の法典化 / 戦間期国際法 / 国際連盟 |
Outline of Annual Research Achievements |
マンレー・ハドソンをはじめとした、戦間期の米国国際法学者の国際法の法典化に関する二次資料の調査を行なった。また、ハーバード大学において収集済みのハドソン文書の整理・分析を並行して実施した。 戦間期の米国の学界においては、国際法の法典化の是非をめぐり盛んな議論がなされていたが、論点の中心となったのはそもそも法典化とは何を指すのかという問題であった。 当時、法典化には、「いかなる法」を法典として編纂するのかという観点から、広狭二つの意味が込められているといわれていた。狭義の法典化は、すでに国際社会で確立していた慣習法をそのままの形で法典に書き込むという、英米法で使われる用語でいえば、いわゆる「再述」を指す。一方で、広義の法典化は、既存の慣習法を改廃する、または現在はまだ規律されていない分野に法を樹てることで、新しい法を創造する「立法」をも含むものと解された。前者は「現にある法」を、後者は「あるべき法」の成文化をそれぞれ想定していると一般的にはいわれる。 そのような中でハドソンは、上記の区分でいえば、広義の法典化の理解を採用し、これを「国際立法」と呼び、その必要性を熱心に説いた。その背景には、従来のように狭い意味での法典化では、国際社会の変革を求める国際世論の声に応えられないというハドソンの考えがあった。ハドソンの国際法観には、法社会学の泰斗ロスコー・パウンドの社会学的法学の影響がみられることが先行研究によって指摘されているが、今後この点とハドソンの法典化に関する見方との関連性について考察を進めていきたい。 なお、これまでの調査の過程で派生的に明らかとなった国際連盟における法典化事業と米国の関係について、その一部を論文の形で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハドソンを中心として、米国国際法学者の著作の調査を行い、概ね必要な資料は収集できた。他方、当初は冬季・春季の休暇期間を利用して渡米し、史料調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響等により、現在に至るまで実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ハドソンの国際法観の思想的背景を、著作物や書簡等の分析を通じて、引き続き探っていくとともに、時機を見計らって、米国のワシントンDC、ボストン、ニューヘイブン等での史料調査を行なう予定である。今後の新型コロナウィルスの影響の推移によっては、調査日程や計画の縮小なども検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響等により、当初予定していた米国での史料調査を行えなかったため、今年度の旅費の支出を断念せざるを得なかった。また、史料調査の進捗状況に応じて順次購入を行うはずだった物品についても、予定額どおりの支出はできなかった。次年度は、感染症の拡大の推移を勘案しながら、史料調査の旅程を組んでいくつもりである。
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Research Products
(1 results)