2021 Fiscal Year Research-status Report
国際連盟における国際法の法典化事業と国際法学者ハドソン
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19K13635
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 力也 日本大学, 国際関係学部, 助教 (80779843)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際法の法典化 / 戦間期国際法 / 国際連盟 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの影響により、アメリカでの資料調査が不可能な状況にあったことから、国際法学者マンレー・ハドソンの個人文書を新たに収集することは断念し、すでに収集済みの資料を用いて、昨年度に引き続き、ハドソンの活動に関わる国際連盟における法典化事業の研究を実施した。 その過程で、法典化事業に対する戦間期日本の貢献に関して、新たな知見ともなり得る資料郡を分析する機会を得た。ハドソンの活躍により、1924年に国際連盟が法典化事業を始動した際、各国の専門家から成る専門家委員会が設置された。この委員会は、いかなる国際法上の課題が法典化に適しているかを勧告するための組織で、その委員に日本の外交官である松田道一が選出された。そこで松田が提出した海賊行為に関する条約草案は、のちに「松田草案」と呼ばれ、ハドソンが中心となって編纂したいわゆるハーバード草案と並ぶ、国際法史上の貴重な前例として、現在に至るまで海洋法研究者を中心に参照されている。 松田草案には、国際法上の海賊行為に関する研究の多くが、程度の差こそあれ、何らかの形で言及する。ただ、それらの主たる関心は、国連海洋法条約を中心とした現行海洋法秩序を支える実定法の解釈論にあり、松田草案はそのための材料の一つにとどまる。一方で、管見の限りではあるが、同草案それ自体を検討対象として、日本と国際法の関係史の観点から論じた研究は、現時点においてはない。こうした現状を踏まえ、松田草案が編まれることになった経緯や、草案から垣間見える松田の国際法観について検討し、その歴史的意義を明らかにする論文を、2021年10月に刊行された『アジア太平洋討究』に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は夏季・冬季・春季のいずれかの休暇期間を利用して渡米し、ハドソン文書に関する史料調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響により実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
時機を見計らって、米国のワシントンDC、ボストン、 ニューヘイブン等での史料調査を行う予定である。具体的には、ワシントンDCでは国務省の外交記録の収集、ボストンではハーバード大所蔵のハドソンの個人文章の追加的収集、そしてニューヘイブンではイエール大で、ハドソンともに国際法の法典化に尽力したエドウィン・ボーチャードの個人文書の収集を行う。今後の新型コロナウィルスの影響の推移によっては、調査日程や計画の縮小なども検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響によって、前年度に引き続き令和3年度もアメリカでの史料調査が不可能となった。これに伴い、補助事業期間の延長を行ったことで、次年度使用額が生じている。 感染症の拡大状況を見極めつつ、渡航が可能になり次第、ワシントンDC、ボストン、 ニューヘイブン等での史料調査を行う。具体的には、ワシントンDCで は国務省の外交記録の収集、ボストンではハーバード大所蔵のハドソンの個人文章の追加的収集、そしてニューヘイブンではイエール大で、ハドソンともに国際 法の法典化に尽力したエドウィン・ボーチャードの個人文書の収集を行う。今後の新型コロナウィルスの影響の推移によっては、調査日程や計画の縮小なども検討する。
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Research Products
(1 results)