2019 Fiscal Year Research-status Report
How China's policy of public opinion control links to its public-diplomacy? : Cases of Xi Jinping era
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19K13641
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
江藤 名保子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 地域研究センター研究院 (30648332)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東南アジアの華人社会 / 「一帯一路」と東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年8月から2020年3月まで、勤務先からの派遣によりシンガポール国立大学東アジア研究所にて客員研究員として勤務する機会を得た。研究計画においては東南アジアでの中国のパブリック・ディプロマシーに関する研究を後半に行う予定であったが、順序を変更して初年度に行うこととなった。 現地では日常的にシンガポール華人・華僑との意見交換を行い、世代間や教育機会の差異による対中観の違いを実感した。そのためまず、背景として華人社会の歴史や東南アジア諸国に対する世論調査の検討を行った。さらに華人ネットワークを形成した心理的な要は地縁・血縁を重視する教育システムにあったと考え、様々な文献の検討から理解を深めた。 またシンガポール滞在中にマレーシア(華人学校跡地での教育システムに関する資料調査)およびタイ(アマタシティ・ラヨーン工業団地での中国系企業への聞き取り調査)にて現地調査を実施した。国境が確立する以前から存在した人的流動性と、その中で成立した華人社会のシステムへの理解を深めることが出来た。重層的に成立した華人社会と、各国の国民統合政策との間に摩擦があることから、パブリック・ディプロマシーを展開する中国の政治情勢だけでなく、受け手側の各国にも社会情勢に基づく初期条件の差異があることを考察に加えることができた。中国側の政策決定から脱却して重要な視野の転換を得た。今後の研究を進めるうえでも大きな収穫であった。 なお以上については、まず時事的なコラムとして短文にまとめウェブマガジンや雑誌で掲載した。これらを足掛かりに学術的な考察を深めたい。また台湾情勢について議論する研究会への参加を日本出張として実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シンガポールでの在外研究の機会を得たことにより、東南アジア地域での中国の影響力を継続的に観察することができた。これは事例考察として、また華人社会への理解を深めるうえでも非常に有意義であった。 ただし10月に予定していた中国出張が邦人拘束問題を受けて取りやめとなり、3月の米国出張も新型コロナウィルスへの懸念からキャンセルとなるなど、必ずしもすべての予定を実施できたわけではなかった。また海外にいる間は機材や書籍の購入手続きおよび輸送上のハードルがあり、十分に資料収集が出来なかった。この点は次年度以降に注力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2つの側面から研究に注力したい。 1)パブリック・ディプロマシーに対する理論的考察を深める。中国が「シャープ・パワー」批判を受ける要因は、パブリック・ディプロマシーとストラテジック・コミュニケーションの混在による失敗ではないかとの仮説を検証する。 2)新型コロナウィルス禍を受けて、米・中、中・台の情報戦が激しくなっている。中国国内の社会不安も高まっていることから、言論統制と外交政策の整合性を改めて考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染の懸念から米国出張を取りやめにしたことが最大の理由である。また在外研究にあたり、勤務先から機材の提供を受けたことから本年度の購入を控えた。
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Research Products
(2 results)