2021 Fiscal Year Annual Research Report
大規模パネルデータを用いたマクロ経済動学分析とビッグデータの活用可能性
Project/Area Number |
19K13649
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中園 善行 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 客員准教授 (10707483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロ経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大規模パネルデータを用いてマクロ経済動学を分析する点にあります。特に本研究では、家計の消費に焦点を当て、集計データでは必ずしも明らかになるとは言えない消費の実態について、個票データの分析によって明らかにすることを目的にしていました。本研究課題では、大規模民間ビッグデータを用いてマクロ経済動学を明らかにするために、まず家計が持つインフレ期待形成の特徴を分析したうえで、インフレ期待と消費の関係性を豊富な情報を含む個票データを活用して分析を行い、以下3点を明らかにしました。第一に、家計のインフレ期待は日ごろ良く買う財の価格変化に応じて修正されることを明らかにしました。この発見は合理的期待形成にしたがうモデルでは家計の行動をとらえきれない可能性を示唆しています。第二に、家計はインフレ期待が高まると、足もとの消費を増やすことが明らかになりました。家計は、将来物価が上昇すると予想すると、現在と将来の消費配分を変更することが分かりました。またインフレ期待と消費の関係性は家計ごとに異質であることが明らかになりました。具体的には、流動性制約に陥っている家計は、インフレ期待が高まったとしても、足もとの消費を増やさず、むしろ減らしているということが明らかになりました。第三に、退職者の消費行動を分析することで、日本の家計は退職後には消費水準が2%以上低下すること、またその消費水準の低下は少なくとも2年間持続することを発見しました。本研究では、民間調査会社が保有する大規模消費パネルデータを用いることで、従来のデータでは迫り切れなかった家計消費の実態を明らかにすることができました。この結果は、民間ビッグデータの活用が経済学研究の新たな地平を拓くきっかけとなり得ることを示唆しています。
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Research Products
(5 results)