2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13654
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山名 一史 神奈川大学, 経済学部, 助教 (80769604)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 異質的動学一般均衡モデル / 構造推定 / ベイズ統計学 / 企業動学 / 組織資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
企業の規模分布を用いたパラメータ推定の研究については、分布情報を用いた構造推定手法を用いることで、既存のパネルデータ推定手法が直面していた、切断を伴う動学パネルデータ推定量のバイアスを抑制できることを、モンテカルロ実験によって示した。この手法はこれまでに提案された手法と異なり、モデルに対して強い統計的な仮定を置く必要がない実践的な手法である。 家計の資産分布を用いたパラメータ推定の研究については、クロスセクションデータのみが得られるデータ欠損環境においても、提案した構造推定手法を用いることで動学パラメータが推定できることを示すとともに、日本の家計の個票データを用いて、実証分析に応用できることを示した。この研究成果は、現在のマクロモデルの大半が動学モデルであるのに対し、実証分析においては静学的な情報であるクロスセクションデータしか利用できない、または手に入らない分野が存在するという現実の政策的な要請に対応したものである。 組織資本の実証分析については、企業のマイクロデータからTFP(全要素生産性)の推計を行い、TFPと同様に企業のマイクロデータから推定された組織資本ストック及び資本減耗率との比較検証を行った。さらに、当該企業の株価に機械学習の因果推論手法を応用した結果と統合することで、UberやAirbnbといったオンラインプラットフォームの出現がどのような影響を参入先の市場にもたらすのかについて、統合的な議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業の規模分布を用いたパラメータ推定の研究は査読付学術誌Journal of Econometric Methodsに掲載された(※採択は科研費採択前である)。 家計の資産分布を用いたパラメータ推定の研究は、推定手法の有効性について評価が得られた一方、用いているモデル及びデータの妥当性に改善の余地があるため、これについては再び進めていく予定である。 組織資本の実証分析については、TFPの推定手法の見直し、組織資本推定手法の整理、理論と実証結果との対比が順調に進んでおり、本年度中に英文査読誌に投稿したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
企業の規模分布を用いたパラメータ推定の研究は完了したので、今後は家計の資産分布を用いたパラメータ推定の研究を引き続き進めていくとともに、本研究のモチベーションから派生した研究として、家計のポートフォリオの変化と資産分布に関する動学一般均衡分析の研究を実施する予定である。 組織資本の実証分析については、TFPと組織資本及び資本減耗率に関する研究を引き続き進めていくとともに、組織資本及び資本減耗率の推定手法を応用した実証研究についても実施する予定である。
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Causes of Carryover |
台風および新型コロナウイルスの影響で、一部出張の自粛及び物品の購入を延期した。また、昨年度の論文が未完成であり、英文校閲を受けていないため、予算に未使用分が発生した。 2年度は、延期していた物品購入および英文校閲を使用したい。出張については、情勢に応じて臨機応変に対応したい。
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