2019 Fiscal Year Research-status Report
On the Interplay Between Secularization and Religion: Focus on John Locke's Religious Thought and its Social Meaning
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19K13664
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
武井 敬亮 福岡大学, 経済学部, 准教授 (90751090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジョン・ロック / キリスト教の合理性 / 聖書 / ジョン・エドワーズ / アングリカン / 宗教的自由 / 世俗化 / 啓蒙思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ジョン・ロックを中心に17世紀の思想家の著作を取り上げ、当時の聖書解釈の方法をめぐる議論及びその結果生じた宗教的言説の変化を分析するとともに、その社会的影響(合理的な聖書解釈に基づく意図せざる結果としての世俗化のプロセス)を検討することにある。 本年度は、ロックの『キリスト教の合理性』(1695年)(以下『合理性』)を二つの観点から再検討した。第一に、同著作それ自体の再検討である。これまでの自身の研究では、ロックの救済論における「内面」と「外面」の一致(=信仰にもとづく行為の実践)の重要性を強調してきた。これに付け加えて、イエスが自身の神性(=「イエスが救い主であること」)を示す仕方に注目し、以下の点をロックが強調していることを他の資料も援用しながら示した。それは、一般大衆であっても、理性的被造物である限り、イエスの行いを通じて、救済の教義を理解することができるという点である。 第二に、国教会聖職者ジョン・エドワーズによる批判の文脈での再検討である。具体的には、エドワーズの批判に対するロックの応答(『擁護』、『第二擁護』)について分析した。その結果、『合理性』で示した「行いの法」、「信仰の法」、「悔い改め」の関係性について、ロックが特に『第二擁護』でより詳細に議論を展開していること、また、その議論の図式がロック以前の国教会聖職者ヘンリ・ハモンドのそれ(「行いの契約/行いの法」、「恵みの契約/信仰の法」、「贖いの契約」の三つから、「贖いの契約」を除く、二つの契約の図式)と類似していることを示した。 以上の研究成果については、研究会や所属学会で口頭発表を行い、現在、公刊ならびに論文投稿に向けた準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、書簡・草稿類からロックの交友関係を把握すること、また、リシャール・シモンの『旧約聖書の批判的歴史』(1678年フランス語版;1682年英語版)の分析を行うことを予定していた。前者については、書簡を中心に作業を進めているが、後者については、関連する二次文献の整理にとどまり、本格的な分析は次年度に持ち越すことになった。ただし、シモンの著作の分析は、当初より次年度も引き続き行うことを予定していたため、研究計画からのずれはそれほど大きくない。また、次々年度に行う予定であった『キリスト教の合理性』の再検討(特にジョン・エドワーズとの比較分析)を前倒しで行っているため、全体としてみれば、おおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、ロックの『パウロ書簡注解』(1707年)の分析を進める予定であったが、(次々年度予定の『合理性』の再検討を前倒しで行ったこともあり)より本格的な分析は次々年度に回し、次年度は、ロックに影響を与えたと言われているリシャール・シモンの『旧約聖書の批判的歴史』(1678年フランス語版;1682年英語版)及びジョゼフ・ミードの『黙示録の鍵』(1627年ラテン語版;1643年英語版)の分析を中心に研究を進めたい。
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