2020 Fiscal Year Research-status Report
On the Interplay Between Secularization and Religion: Focus on John Locke's Religious Thought and its Social Meaning
Project/Area Number |
19K13664
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
武井 敬亮 福岡大学, 経済学部, 准教授 (90751090)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ジョン・ロック / ジョン・エドワーズ / 『キリスト教の合理性』 / ソッツィーニ派 / 三位一体 / 理性 / 無神論 / 聖書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ロックの『キリスト教の合理性』を再検討するにあたり、論敵となった国教会聖職者ジョン・エドワーズの二つの著作、『無神論の幾つかの原因及び誘因に関する若干の考察』(1695年)と『暴かれたソッツィーニ主義』(1696年)の分析を行った。その理由は、前年度、エドワーズの批判に対するロックの応答を分析する中で、エドワーズ自身がどのような議論を行っていたのかを正確に把握する必要があったからである。 エドワーズは、『考察』において、フランシス・ベーコンの議論(「無神論」)に依拠しながら、無神論の原因を列挙し、ソッツィーニ派を無神論者と批判する。特にエドワーズは、ソッツィーニ派が、彼らの理性を超えたもの(above their reason)(具体的には三位一体)を信仰の対象にしていないことを問題視する。他方、ロックの『合理性』に対しては、ロックが救済に必要な唯一の信仰箇条として、「イエスを救い主であると信じること」を挙げる一方、それ以外の教説(原罪、イエスの神性、三位一体、キリストの贖罪)に言及していないことを批判する。ロックに対するこうした批判は、『暴かれたソッツィーニ主義』でも繰り返されている。 以上の分析から、エドワーズによるソッツィーニ派とロックに対する批判の仕方には違いがあることが明らかになった。前者では、「理性を超えた教義」の信仰の有無に焦点が絞られているのに対して、後者では、認識論的な批判というよりも、聖書の特定の箇所に言及しているか否かを中心に批判が展開されている。このエドワーズの批判様式に呼応するかたちで、ロックも、教義論争に踏み込むことなく(あるいは意図的に回避しながら)、エドワーズに反論したと考えられる。 上記の研究成果については、研究会や所属学会で口頭発表を行い、現在、論文投稿に向けた準備を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナウイルスに起因する様々な問題への対応に追われ、十分な研究時間の確保が難しかったこと、また、次年度に行う予定であったジョン・エドワーズとの比較分析を前倒しで行った結果、当初予定していたリシャール・シモンの『旧約聖書の批判的歴史』(1678年フランス語版;1682年英語版)及びジョゼフ・ミードの『黙示録の鍵』(1627年ラテン語版;1643年英語版)の分析を十分に行うことができなかったため、当初の計画よりも「やや遅れている」と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ロックの聖書解釈の特徴を析出するに当たり、リシャール・シモンの『旧約聖書の批判的歴史』及びジョゼフ・ミードの『黙示録の鍵』を分析する必要があるが、進捗の遅れを取り戻すため、ロックの聖書解釈により影響を与えたと思われる前者の著作の分析に比重を置き、後者については必要に応じて参照するに留めたい。並行して、ロックの『パウロ書簡注解』の分析を行い、ロックの聖書解釈にシモンの聖書批評の影響がどの程度見られるのかを明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた国内外の学会が、延期や中止、オンライン開催となったこと、また、海外での資料調査ができなかったことにより、旅費・宿泊費等が不要になったため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、資料調査で入手予定であった資料を補完するような研究資料や図書の購入費用に充てる予定である。
|