2021 Fiscal Year Research-status Report
On the Interplay Between Secularization and Religion: Focus on John Locke's Religious Thought and its Social Meaning
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19K13664
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
武井 敬亮 福岡大学, 経済学部, 准教授 (90751090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジョン・ロック / ジョン・エドワーズ / 『キリスト教の合理性』 / 三位一体 / 理性 / 啓示 / 無神論 / 聖書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の二つの作業を行った。まず、ロックの『パウロ書簡注解』に関する先行研究を整理し、既存の研究において、同書がどのような視点から分析されてきたのかを確認した。そして、それを踏まえて、同書の分析を開始した。次に、前年度に行ったジョン・エドワーズ(国教会聖職者であり厳格なカルヴァン主義者)の著作の分析を踏まえて、エドワーズの批判に対するロックの反論(『キリスト教の合理性の第一の擁護』(1695)、『キリスト教の合理性の第二の擁護』(1697))を分析し、ロックの宗教的自由の射程について検討した。一般的に、ロックは、『寛容論』(1667)において、初期の著作『世俗権力二論』(1660-2)にみられる「保守的」立場を変えて、より自由主義的な立場を取るようになり、その立場は『寛容書簡』(1689)に受け継がれたと言われている。他方で、管見の限り、『キリスト教の合理性』以降のロックの議論の中には、宗教的自由の拡大に対する警戒心を見て取ることができる。特に、名誉革命後の三位一体や義認をめぐる論争が過熱する中、ロックは、宗教的自由が熱狂へと変化しそれが社会の不安定化をもたらすことを危惧していたように思われる。そこで、宗教的自由の拡大を抑制するためにロックは聖書の合理的な解釈を提示したのではないかという観点から、ロックのエドワーズに対する反論をあらためて検討した。そして、エドワーズに反論する中で、ロックが『キリスト教の合理性』の議論を拡充し、神の意志への服従(=聖書の教えの実践)をより強調していることを具体的に明らかにし、それをロックの「保守的」側面として示した。この研究成果については、John Locke Society(JLS)が主催するThe 2021 John Locke Conferenceにおいて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度の成果を踏まえて、ジョン・エドワーズとの比較分析を優先的に行った結果、『パウロ書簡注解』に関する先行研究の整理及び同書の分析を開始することができたものの、当初予定していたリシャール・シモンの『旧約聖書の批判的歴史』(1678年フランス語版;1682年英語版)の分析を十分に行うことができなかったため、当初の計画よりも「やや遅れている」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ロックの聖書解釈の特徴を析出するに当たり、リシャール・シモンの『旧約聖書の批判的歴史』の著作の分析を重点的に行うとともに、ロックの『パウロ書簡注解』の分析を行い、ロックの聖書解釈にシモンの聖書批評の影響がどの程度見られるのかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた国内外の学会が、延期や中止、オンライン開催となったこと、また、海外での資料調査ができなかったことにより、旅費・宿泊費等が不要になったため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、資料調査で入手予定であった資料を補完するような研究資料や図書の購入費用に充てる予定である。
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