2021 Fiscal Year Research-status Report
Statistical analysis of high-dimensional high-frequency data
Project/Area Number |
19K13668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 祐太 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (80745290)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Cramer型の相対誤差評価 / Steinの方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究では,S&P500指数構成銘柄の高頻度データを用いて銘柄間のネットワーク構造の解析を行なったが,その際に統計的に有意なリンクのみを検出するために多重検定の問題を解く必要があった.前年度の報告に記載した通り,典型的な多重検定法は高次元データでは保守的すぎるため,今年度はこの問題を解決するための統計理論の構築に取り組んだ.近年注目を浴びている方法として,False Discovery Rate (FDR)をコントロールするアプローチがある.このアプローチは,従来よく利用されるFamily-Wise Error Rate (FWER)をコントロールするよりもより積極的に帰無仮説を棄却するため,近年高次元データにおける利用が広まっている.FDRをコントロールして多重検定を実行するための代表的な方法として,Benjamini-Hochberg法(BH法)がよく知られている.BH法の適用を高次元データにおいて理論的に正当化するには,正規近似の相対誤差に対するCramer型の評価が必要となるため,今年度はこの問題について研究した.高次元高頻度データにおける応用では,確率微分方程式の汎関数として与えられるような統計量に対してそのような評価を導出する必要があり,特に実現共分散に対する結果が必要である.FWERをコントロールするアプローチを高次元高頻度データの文脈で正当化するために本研究で開発した高次元正規近似の理論はSteinの方法をベースにしており,Steinの方法はCramer型の評価の導出にも応用可能なことが知られているため,今年度の研究ではこのアプローチの高頻度データの文脈への拡張を試みた.結果として,ボラティリティが非確率的なケースには拡張できることを示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の実証研究で得られたフィードバックに基づき,高次元高頻度データの設定でも保守的になりすぎないように多重検定を実行するための統計理論の開発について,ある程度の見通しが得られたため.特に,正規近似の相対誤差に対するCramer型の評価の高頻度データの設定への拡張は,これまでのアプローチでは自明ではなかったが,今年度に発見したアプローチはそのような拡張が可能であることが見込まれるため.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究で導出した,実現共分散に関する正規近似の相対誤差に対するCramer型の評価は,ボラティリティが非確率的であるという仮定が必要であるが,ファイナンス分野ではこのような仮定は現実的でないことが知られているため,この仮定を緩和することを目指す.相対誤差の評価ではなく絶対誤差の評価の場合は,実現共分散行列の推定誤差を二重Skorohod積分と見なしてMalliavin-Steinの方法を適用することで,ある程度妥当な誤差評価を得られることが知られている.今年度の研究で発見したアプローチは,ある意味で絶対誤差の評価を相対誤差の評価へと変換する方法となっているため,上述の方法を相対誤差の評価にも適用可能であることが見込まれる.このアイディアが実際に実行可能かどうか検証することを計画している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響,特にオミクロン株の発生の影響で,本年度に対面で参加する予定だった研究集会のすべてにオンラインで参加することを余儀なくされたため,それに伴う旅費の支出が全く不要となり,その分の次年度使用額が生じた.次年度については現在のところ状況がかなり改善しているため,可能な範囲で研究集会への対面参加のための旅費にあてることを計画している.また,昨年度に引き続き,余剰分については新規の金融高頻度データの購入にあてることを計画している.
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