2020 Fiscal Year Research-status Report
An innovative approach for unifying causal inference, missing data analysis, and copula models
Project/Area Number |
19K13670
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茂木 快治 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (60742848)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 因果推論 / コピュラ / 欠損データ分析 / カリブレーション / トリートメント効果 / 回帰分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、欠損値を含むデータに対するコピュラ回帰の実行方法を提案した。パラメトリック回帰は、説明変数の数によらず容易に推定可能であるが、定式化の誤りの恐れがつきまとう。一方、ノンパラメトリック回帰は、定式化の誤りの恐れはないが、説明変数の数の増大とともに急速に実用性が低下する(次元の呪い)。コピュラ回帰モデルは、比較的少ないパラメータでフレキシブルな当てはまりを実現するというコピュラの利点を生かした回帰モデルであり、パラメトリック回帰とノンパラメトリック回帰の折衷案として近年注目されている。 既存のコピュラ回帰は、欠損値のない完備データを想定して構築されていた。本研究では、データの一部がMissing at Random (MAR)になっているという現実的な状況を想定し、コピュラ回帰の実行方法を提案した。その際、前年度に提案したカリブレーション推定を応用した。具体的には、データが観察される個体と観察されない個体との間の属性のバランスを考慮し、それぞれの個体に適切な加重を付与した上でコピュラ回帰を実行する。提案の手法は、大標本および小標本において、統計的に望ましい性質を有する。 実証分析の事例として、ドイツの製造業500社の売上と利益にコピュラ回帰を応用した。売上は全500社について観察されるが、利益は一部の企業についてのみ観察されるため、提案の手法が有効性を発揮する。分析の結果、データの欠損を明示的に考慮した場合と考慮しない場合では得られる回帰曲線が有意に異なることが明らかとなり、提案の分析手法の有用性が示唆された。 以上の研究成果をまとめた学術論文は、Journal of Multivariate Analysis (SCI掲載有、2019 Impact Factor = 1.136)に採択された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画どおり順調に進行中である。前年度にコピュラそのものに対して応用したカリブレーション推定を、今年度はさらにコピュラ回帰に応用した。これにより、本研究課題の当初の目的どおり、コピュラ、欠損データ分析、因果推論の結びつきがより一層強化された。2年目の研究成果をまとめた論文が1年目同様Journal of Multivariate Analysisに採択された点も、大きな進展である。3年目の研究推進の見通しも十分に立っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、因果推論に関する研究を行う。因果推論とは、ある処置T(トリートメント)が結果Yに対して与える効果(処置効果)を推定することである。因果推論のモデルを構築する際、重要なポイントが2つある。第一のポイントは、処置Tのとり得る値の範囲である。最も単純なケースでは、処置Tは二項的な値をとる(処置を行うか否かの二者択一)。より一般的なケースでは、処置Tは多項的もしくは連続的な値をとる。第二のポイントは、どのような種類の処置効果を推定のターゲットとするかである。最も単純なケースでは、平均的な処置効果がターゲットとなる。より進んだケースでは、中央値や四分位点などの分位点効果がターゲットとなる。 本研究では、これら2つのポイントに関して極めて一般性の高いアプローチを提案する。処置を受けた個体と受けなかった個体の間の属性のバランスを考慮し、各個体に適切な加重(カリブレーション加重)を付与した上で処置効果を推定する。本研究のアプローチは、様々な種類の処置Tと推定ターゲットに対して統計的に望ましい性質を有する。さらに、提案のアプローチを応用し、米国大統領選挙における政治広告Tの政治献金Yに対する処置効果を推定する。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により国内外への学会出張が大幅に制限された。その影響で、2020年度の旅費の執行額は申請時点での想定よりも少ない金額となった。差額分は、オンラインの学会報告や共同研究打ち合わせのための費用に充てる。
|
Research Products
(4 results)