2019 Fiscal Year Research-status Report
Purpose of Trade Agreements and Reciprocal Trade Liberalization under the Progress of Cross-border Unbundling of Production
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19K13692
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小橋 文子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 准教授 (30528922)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経済政策 / 通商協定 / 国際的工程間分業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、国際的な工程間分業の進展下における財貿易を通じた国家間の経済依存関係の特異性を考慮して、通商協定の役割や必要性を理論的に分析している。とくに、通商協定が果たすべき新たな役割が生まれてくるのか、通商協定による互恵的な貿易自由化のあり方はどのように異なってくるのか、について分析している。
2019年度には、本研究の成果の一つである拙稿"Trade Agreements with Cross-Border Unbundling"がJournal of Japanese and International Economicsより刊行された。
本稿では、 中間財を輸出し垂直連関する最終財を輸入している国が、中間財に対する輸出関税・補助金と最終財に対する輸入関税・補助金をうまく組み合わせて使用することで、自国に利するように貿易相手国の国内調達中間財(非貿易財)の現地価格を操作する可能性を指摘した。既存研究では、通商協定の目的は原則として交易条件の操作に伴う国際的な余剰移転の外部効果を是正することに尽きることが知られている。しかし、本稿の理論分析結果は、従来の交易条件の操作だけでなく、相手国の現地価格の操作に伴う外部効果を是正するように通商協定を設計する必要性を示唆している。さらに、これら2つの外部効果が生じうる状況においては、従来のマーケットアクセスの交換では互恵的な貿易自由化を達成できないことを明らかにした。そして、国際的な工程間分業の進展下における「真の」交易条件を定義しなおすことを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私的な事情により、渡米して関連研究を行う研究者と交流したり、学会やセミナー報告などで研究成果を発信したりする機会をあまり作れずにいる点では予定通りに進んでいないが、まだ初年度であるので今後の目標としたい。まずは本研究課題に専念する時間を確保し、さらなる成果を生み出していけるよう精進していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、交易条件の操作以外の理由で国際的な外部効果が生じるケースを検討し、その外部効果を是正するための通商協定の役割を理論的に分析していく。通商協定の設計のあり方を経済学的視点から検討するにあたって、通商法(WTO法)分野で蓄積された知見と有機的に結びつけていきたいと考えており、関連書籍、資料から勉強させていただきたい。また、通商政策の応用理論研究の第一人者であるRobert Staiger教授とは、継続的に活発な議論を行ってフィードバックを得ながら、本研究を深めていきたいと考えている。そして、本研究を通して得られた研究成果は、日本国内だけでなく、国際経済学分野の主要な国際会議でも発表し、多様な研究者と交流し議論を重ねるとともに、世界的に知名度のある学術ジャーナルへ投稿し、広く国内外に発信していきたい。
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