2021 Fiscal Year Research-status Report
価格支配力を伴う市場構造の変化が不確実性下での環境政策の決定に与える影響
Project/Area Number |
19K13695
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
森 大建 九州産業大学, 経済学部, 講師 (20779623)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情報の非対称性 / 環境政策 / 環境税 / 補助金 / セカンドベスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,規制当局と市場支配力を持つ規制対象企業間に情報の非対称性が存在する状況において,不確実性と市場支配力が次善の環境政策の決定および実施条件に与える影響について理論的に明らかにすることを目的としている。 令和3年度の研究では,市場に存在する2つの歪みに注目した。すなわち,外部性による過大生産,市場支配力による過少生産である。一般的に,環境政策としての経済的手段を対象企業に課す場合,生産量を抑制することで環境被害の軽減を伴わせることが環境政策を実施する意義となる。しかし,生産量を減少させれば当然ながら余剰は減少してしまう。環境被害を避けるために生産量を抑制すべきか,あるいは市場の需要を満たすべく生産量を適切な水準まで増加させるべきか,これらの判断は環境被害の程度に委ねられるであろうということが推測できる。 上述した状況をモデル化するため,Schoonbeek and de Vries (2009)を参考に,生産量を抑制したい場合には環境税,生産量を増加させたい場合には補助金制度を対象企業に課すモデルを構築した。本研究課題では,Schoonbeek and de Vries (2009)のモデルにワイツマンの定理を応用し,適切な環境政策とその実施条件を明らかにする研究を進めている。具体的な研究成果は完全に導出しきれてはいないものの,環境被害の程度によっては,補助金や課税政策などの環境政策を実施しない方が社会にとって望ましい,という結論も得られそうである。 今後は,上記モデルを完成させ,計算結果と併せて論文として取りまとめ,査読付き論文への投稿する段階へと進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
数理モデルを研究過程において変更したことが主な理由であるが,大幅な遅れとはなっていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の推進方策と同様,これまでの研究成果を論文として完成させ,査読付き国際誌へ投稿,受理を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大により出張が不可能となったため,延長申請をおこなった。使用計画としては,研究成果を論文として取りまとめた後,海外の査読付きジャーナルに投稿・出版するための英文校正や論文投稿料にあてることを計画している。
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