2023 Fiscal Year Annual Research Report
価格支配力を伴う市場構造の変化が不確実性下での環境政策の決定に与える影響
Project/Area Number |
19K13695
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
森 大建 九州産業大学, 経済学部, 講師 (20779623)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境政策 / 不確実性 / 環境税 / 価格支配力 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では,前年度に構築した理論モデルから導かれた結果について考察し,得られた結論がより分かりやすく伝わるように修正を加えた。また,その結論を明確に伝えられるよよう,具体的な数値を用いてグラフを作成した。モデルでは,社会的最適な次善の生産水準における限界被害の大きさの分だけ環境税率を設定することで,外部不経済の是正を目指した。その一方で,価格支配力によって引き起こされる過少生産を改善するために,価格支配力を軽減するような補助金率を設定し,市場需要の充足を目指した。政府と規制対象企業の間に不確実性が存在する場合,ワイツマンの定理のように,限界費用と限界被害の傾きの大小関係が政策の優劣を決定することが多い。しかし,今回の結論では,市場需要を満たすような補助金政策が常に政策として優先されるべきであることが明らかとなっている。また,市場需要関数の傾きが限界損害関数の傾きよりも相対的に大きくなる場合には,補助金政策の有効性が一層高まることも明らかとなった。 研究期間全体を通じて得られた1つ目の成果は,不確実性を含む支配的企業モデルにおいて,総限界削減費用の傾きが限界被害の傾き以上に大きいとき,課税政策が効率的な政策となるということである。また,非規制対象企業の数が増加するとき,効率的な環境政策は各企業の不確実性の程度に依存し,支配的企業の不確実性が相対的に大きい(小さい)場合,数量規制(価格規制)が望ましい政策となることが分かった。2つ目の成果は,価格支配力を持つ市場の最もシンプルなケースとしての独占市場による分析から得られた。不確実性を含む独占市場モデルにおいては,ワイツマンの定理のように,限界被害の相対的な傾きの大きさが政策の優劣を決めるのではなく,市場需要を満たすために行われる補助金政策が優位になることが明らかとなった。
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