2019 Fiscal Year Research-status Report
有権者の投票行動と政策への民意の反映についての政治経済学的実証研究
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19K13718
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岡部 智人 一橋大学, 経済研究所, 講師 (50768364)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 投票行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有権者の投票行動と為政者によって実行される政策との関係について、行動学的投票理論に基づきながら、実証的に検討することを大きな目的としている。令和元年度は、特に、先進国における投票行動について着目し、その実証研究を進めた。具体的には、英国における世代間の投票率の違いを考察するため、ライフサイクル理論の妥当性について検証した。ライフサイクル理論とは、ライフイベント(就業、結婚、実子をもつこと等)が個人の投票に正の影響を与えるという仮説である。 データ分析の結果、英国において、ライフサイクル仮説が支持されることが明らかになった。これは、若者の投票率が中年以上の有権者よりも低い理由の一つの説明になりうることを示唆している。具体的には、人生の若年期においては、様々な政策が自分以外に及ばないため、政治への関心が限定的になりがちである一方、結婚、家族形成等のライフイベントを経験していくと、自分が関わるコミュニティーが広がっていき、それに伴って政策が影響する生活範囲が広がっていくため、政治への関心が高まり、結果として投票率も向上していくというストーリーである。 当該研究結果は、大学の研究セミナーにおいて報告し、今後の研究につながる建設的なフィードバックを得ることができた。また、英国在住の研究協力者と打ち合わせを数回行い、回答者の居住地データの追加取得のための段取りを固めることができた。その後、同協力者が事務手続きを進め、現時点で承認待ちの状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、英国有権者の投票行動に関するデータ分析を着実に進めることができた。具体的には、英国のデータであるBritish Household Panel Survey/ Understanding Societyを用いて、ライフサイクルイベントの経験が投票率の向上に大きく寄与していることを示すことができた。この研究成果は、慶應義塾大学のワークショップで報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に引き続き、英国のデータ分析を進める。まずは、ライフサイクル仮説の頑強性を確認するため、回答者の住所情報を加えた回帰分析を実施したい。(当該情報は、秘匿データのため、現在、在英の研究協力者が利用許可の手続きを行っている。)従来の結果と矛盾ない結果が得られることを期待しているが、いずれにせよ、この頑強性確認が済んだ後、ワーキングペーパーとして研究成果をまとめ、さらに学会発表に臨みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
大きな理由は、2020年2~3月に成果発表のために計画していた欧州出張(英国)を中止したことである。新型コロナウイルスの影響により、来年度は国内・海外を問わず、出張できるかどうかは不透明であるが、いずれにせよ、学会報告を計画し、当該残予算は、そのための費用に充当したい。
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