2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Impacts of Centralized Admission on Regional Distribution of Human Capital: An Empirical Study Based on Mechanism Design
Project/Area Number |
19K13719
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
田中 万理 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (70792688)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 入学選抜制度 / 人的資本形成 / 旧制高等学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等教育にかかる限られた国の資源を有用かつ公平に配分するためにはどのような入学者選抜制度が最適なのか。世界各国で採用されている選抜制度の一類型は、受験者が学校に応募し、学校がそれぞれ独自に選抜を行うという地方分権型のものである。これに対して、近年多くの国々で導入されている統一選抜制度は、受験者の学校に関する選好順位や成績などに基づき国家レベルで域内の各学校への入学者を決定する。これら二種類の選抜制度については理論的に様々な分析がなされているが、実際の制度変化の影響を検証した実証研究は少なく、さらにその長期的な効果は解明されていない。 本研究では、そのような全国統一選抜制度の導入が戦前の日本で世界に先駆けて行われていたという点に着目し、関連データを網羅的に収集しデータベースを構築することで、制度変化の短期的・長期的な影響について市場設計理論的仮説に基づいた実証研究を行った。分析の対象は、当時全国に八高ほどあった旧制高等学校の入学制度である。その選抜方法として、当初は学校分権型制度が使用されていたが、1902 年に能力主義的なアルゴリズムを用いた全国統一学校入学制度が導入された。この様な統一入学制度の運用は、1902年当時、世界で他に例を見なかった。 この制度変化の影響として、関連データの分析から次のことが明らかになった。まず短期的には、東京を中心とする都市圏に成績優秀者が多く偏在していたことにより、統一入学制度の下では都市圏の受験者がより多く受かるようになった一方、地方の受験者がより多く落ちる結果になり、都市・地方間の高等教育受益者数の格差が拡大した。さらにこれが長期的には、都市・地方間のエリートの偏在を加速させるという人的資本の格差をもたらしたことがわかった。一方、統一入学制度の下ではエリートの総数が増加する、つまり学校がより効率的にエリートを輩出できることも明らかになった。
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Research Products
(2 results)