2020 Fiscal Year Research-status Report
税制が政策における世代間対立に与える影響:政治経済学的アプローチ
Project/Area Number |
19K13721
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小寺 剛 富山大学, 学術研究部社会科学系, 准教授 (00824814)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人口減少 / 税の負担構造 / 制度の維持可能性 / 政治経済学的均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,人口動態の変化による世代ごとの政治力の変化を考慮することで政治的に実行可能性の高い財政政策の在り方を検証することを目的とする.より具体的には,若年層向けの公的教育と老年層向けの公的年金のように世代間対立が生じうる政策を実行する上で,政治的に支持される,より望ましい税制や公的債務のあり方を理論的に分析する.そのため,政策を行うための様々なファイナンススキームの下で政策の民主的な意思決定プロセスを考慮したモデルを構築し,政治と経済両面における均衡の導出とその分析を行う. 前々年度は,人口減少経済において所得税だけでなく消費税を教育のための徴税手段として用いることで若年層だけでなく老年層にもメリットがあることを示した. それをふまえ,前年度は消費税を用いた教育制度の維持可能性について追加的な分析を行い,主要な結果として,人口減少率が十分高い場合は政治的に決定される消費税率が0になるという意味で教育制度が維持できない可能性があることが示された.これは現役層にとっての教育充実のメリットが若年層の人的資本蓄積に伴う引退時の年金給付増加によるものであり,人口減少が深刻な場合は消費税負担のデメリットがそのメリットを上回るためである.ただし,他の研究に見られるように,教育充実に対する現役・老年層のインセンティブが若年層への利他性にある場合は結論が異なると考えられる. これらの結果は,これからの政策およびその財源となる税制について議論するうえで意義あるものであると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
自分の個人的な事情,新型コロナウイルスの影響などにより予定していた研究時間が十分に確保できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の取り組みに追加的な分析を加えたうえで,なるべく早くまずはワーキングペーパー等の形で結果を発表したいと考えている.その後,モデルへの公的債務の導入や数値解析など,より複雑な,あるいは関連のある研究課題に取り組むことを予定している.
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Causes of Carryover |
学会,研究会などがオンライン形式で実施されたため旅費が生じなかった.今後は英文校正や投稿料などによって予算を消化することを予定している.
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