2020 Fiscal Year Research-status Report
消費課税が産業別経済変数に及ぼす効果の理論実証分析
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19K13727
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
平賀 一希 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (40528923)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 消費税 / 動学的一般均衡モデル / Laffer Curve / 価格転嫁 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国においては、消費増税の必要性が広く議論されている。消費増税に対する様々な意見がある状況の中で、2019年10月に消費税率を10%に引き上げるとともに、食料品などに対して8%に税率を据え置く軽減税率が導入されることが予定されている。消費課税、特に軽減税率が導入されることで、経済全体だけでなく、産業別の資源配分や価格にも影響を与えることが予想されている。そこで、本研究は、①中間投入財など財が複数存在する経済における消費課税のあり方として従価税と従量税のどちらが望ましいのか、②複数財が存在する経済において消費税率はすべき一律にすべきか、ないしは異なる税率を設定すべきか、③消費増税前後における各財の生産、価格がどの程度変化するかの3つのテーマについて、産業組織論における寡占理論や動学的一般均衡モデルを用いた理論分析、および産業別価格・物価指数データを用いた実証分析を試みる。 また、個別消費税の一つである入湯税について、神奈川県箱根町の月次データを用い、自然災害による外生的影響の通時的効果を検証した。その結果、東日本大震災による間接的影響に比べ、箱根山火山警戒レベル上昇による一部立入規制がはいるなどの直接的影響のほうが、長期的な被害が大きいことが分かった。短期的影響については、東日本大震災による影響のほうが大きいが、ショックの持続性は小さいことも分かった、 同時に、Go toトラベル政策による旅行消費の補助金政策の効果について検証を行った。得られた結果としては、Go toトラベル政策によって、宿泊観光客数は約6~10%程増加し、その内訳をみると、他県への移動が多かったことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の消費税の研究に加え、サービス消費に関する個別税の一つである入湯税の研究についても派生して着手することができた。具体的には、神奈川県箱根町の入湯税収の月次データを用いて、東日本大震災および箱根山火山警戒レベル上昇といった自然災害による直接、間接的な影響の経時的効果の検証を行った。また、観光消費については、実質的に消費減税の効果を持つGo toトラベルキャンペーンの影響について、東京都を対照群とした差の差分析を行い検証を行った。 一方、消費増税の産業別地域別効果の検証については、コロナ禍の影響により、海外学会での報告を行い、対面での研究へのフィードバックを得る機会を2020年度に複数回予定していたが、これらの機会が得られなかったこともあり、研究の推敲に時間を要している。同時に、大学の移籍などによって、理論研究についてはやや進捗が遅れているのが課題として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度については、実証研究(消費課税の価格転嫁、Go to トラベル政策の効果)については国内外オンライン学会での報告を行い、得られたフィードバックを基に改訂を行う。同時に、理論研究にも着手し、これらの成果については、今年度中ないしは2022年度に国内外の学会やワークショップ等で報告しフィードバックを得る予定である。理論研究に集中するため、状況によっては本課題の研究期間を1年度延長する可能性も選択肢として検討している。
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Causes of Carryover |
本来であれば行く予定であった国内外での研究発表が全てオンライン開催となったこと、および購入予定であったパソコンの購入を延期したことから、これらの予算については2021年度(ないしは、期限を1年延長して2022年度)に使用する。
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