2024 Fiscal Year Annual Research Report
生活保護に関する実証分析:空間経済モデルによる考察
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19K13732
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| Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
檜 康子 大阪商業大学, 経済学部, 講師 (30761514)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 生活保護 |
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、景気変動と生活保護受給の関係を実証的に明らかにすることを目的とした。分析にあたり、世帯主の年齢構成や世帯人数などの属性的な類似性を空間的な距離としてとらえ、検討を進めた。生活保護率の増加は主に高齢化の影響を強く受けているが、景気変動との関連が顕著なのは、労働市場において潜在的に稼働能力を持つ世帯(「母子世帯」や「その他の世帯」)であると想定される。このため、本研究では年齢・時点・世代効果を考慮する分析アプローチを採用し、特に学卒時の労働市場の逼迫度との関連性を明らかにするため、1986年から2020年までの年次データを用いて分析を行った。高齢化による影響を除外したうえで、それぞれの要因が生活保護受給率に及ぼす影響を統計的に検証した。 分析の結果、以下の3つの効果が明らかになった。まず、年齢効果として、年齢が上昇するにつれて生活保護率が高くなる傾向が明確に示された。次に世代効果については、1970年代後半から1980年代前半に生まれた、いわゆる「就職氷河期世代」で生活保護率が顕著に高いことが確認された。しかし、その後の世代でも生活保護率が改善されていないことから、単なる労働市場の状況改善が生活保護率低下に直結しないことが明らかとなった。この結果は、非正規雇用の増加や雇用流動化など、労働市場の構造変化が生活保護受給に新たな影響を及ぼしている可能性を示唆している。最後に、時点効果については、1980年代後半から1990年代前半にかけて生活保護率は低下傾向にあったが、その後は景気循環と連動した動きを示した。 以上の結果を論文としてとりまとめ、公表した。
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