2019 Fiscal Year Research-status Report
What causes low female labor supply?: separating the effect of culture from economic& social factors using large-scale data from Japan
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19K13733
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
劉 洋 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (50635084)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女性就労 / 外国人 / 経済的・社会的要因 / 文化的要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、日本に居住する外国人のデータを用いて、女性の労働供給の決定における経済的・社会的要因と文化的要因の識別に関する実証研究を行った。経済学分野で、疫学的なアプローチ(epidemiological approach)における女性就労の研究のうち、先行研究は、女性就労が進んだ受入国に限定して分析を行っている一方、本研究は、女性の労働参加率が出身国より低い受入国を分析対象にしている点で、新しいエビデンスを提供した。具体的には、標準的な夫婦世帯における妻の労働供給モデルに、文化の要素を導入した理論モデルを構成し、実証研究を行った。データは、『国勢調査』2010年の個票データである。推定結果として、まず、女性就労の決定要因については、教育、夫の収入、親との同居などの経済的・社会的要因が有意である一方、出身国の文化(出身国における女性の家事に対する価値観と、出身国の女性労働参加率という2つの変数)からの影響も大きいということが示された。そして、女性本人の出身国文化の影響のみならず、配偶者の出身国文化の影響は、女性本人の文化の影響を下回るものの、有意な値が得られた。それから、居住期間と労働参加率については、居住期間が5年以上のグループは5年未満のグループよりほとんど、女性の労働参加率が高いことと、2つのグループの差のうち、個人属性、家族属性、地域属性から説明できる部分は小さいことが示された。属性で説明できない部分は、現地労働市場への適応(経済の同化)と、現地文化の受け入れ(文化の同化) によるものだと考える。経済の同化は正で、文化の同化は負で、全体的な同化は正のため、経済の同化の影響は文化の同化の影響を上回ると推測できる。以上のように、本研究の分析結果は、文化が女性の労働参加の意思決定における役割の重要性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通りに進めているため
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本人の大規模の全数・抽出データを分析に取り入れて研究を進める。まず、記述統計を用いて、日本人と外国人の間の格差 (外国人の出身国別の格差も含む)を明らかにする。その際に、女性の労働参加率、教育、就労、結婚・出産・子供の数、世帯状況などについて比較する。それから、計量分析を行い、日本人データと外国人データを計量モデルに取り入れ、経済的・社会的要因と文化的要因のそれぞれが、日本の女性労働参加率に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、今年度に購入予定だったノートパソコンは次年度に購入することとなったためである。今年度に購入予定だったノートパソコンの価格は予想を上回り、申請した交付額が不足しており、また、今年度には代用するノートパソコンが利用可能のため、本研究計画に必要なノートパソコンは次年度に購入することにした。
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